静岡市から清水・三保へと駿河湾を背に歩く二泊三日の旅に、編集部が選んだ宿は三軒。市街の都市プレミアムを起点に、漁港の一棟貸し、そして富士と駿河湾を一枚の開口で受ける丘の上の現代建築へ——内陸から海へと宿の性格が移っていく動線を、ひとつの旅程として設計した。東海道の宿場、清水港、三保松原。地層のように重なる土地の記憶を、宿を渡りながら読み解く三日間である。梅雨明けの駿河湾が、もっとも澄んで見える季節に向く。
| Day | 宿 | エリア | Score | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ホテルアソシア静岡 | 静岡市葵区 | 85 | 250 | ¥25–¥44k | 静岡駅直結、東海道の起点に立つ都市プレミアム |
| 2 | 日本色 NIHON IRO | 用宗 | 91 | 6 | ¥63–¥97k | しらす漁港の家をまるごと一棟、海辺の静寂 |
| 3 | 日本平ホテル | 清水区・日本平 | 92 | 80 | ¥50–¥89k | 富士と駿河湾を一枚の開口で受ける風景の建築 |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
Day 1 — 静岡市街、東海道の宿場に立つ都市プレミアム
初日は新幹線で静岡駅に降り、街を起点に旅程を組み立てる。駿府城跡、登呂遺跡の弥生水田、そして東海道の宿場町の記憶が同心円状に重なる市街で、夜を都市プレミアムに預ける。翌日からの海への移動を考えれば、駅直結の一軒が動線上もっとも理にかなう。
1. ホテルアソシア静岡 — 静岡市葵区
静岡駅に直結する250室。東海道の起点を都市プレミアムとして起こす、二泊三日の最初の夜に置きたい一軒。
Media Picks Score: 85 / 100 250室、シティホテル。
目安価格 ¥25,000–¥44,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
静岡駅の駅ビルと一体に建つ立地が、この宿の核である。新幹線改札から雨に濡れず客室へ向かえる利便は、翌日からの港・松原への移動を控えた初日の夜に効いてくる。イタリア料理、中国料理、日本料理、鉄板焼と複数の専門レストランを館内に擁し、市街での外食に頼らず夜を完結できる点も、出張慣れした読者の旅程に合う。観光の足場としての強さで選んだ起点である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、駅直結の利便と客室・接客の安定感に高い評価が集まる傾向が読み取れる。一方で、規模の大きいシティホテルゆえに静謐さや個性を最優先する旅には性格が合わない、という見方も一定数うかがえる。眺望や非日常を宿そのものに求めるなら、二日目以降に委ねるのが妥当だと感じられる。
向く人 / 向かない人
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向く:
新幹線で入る出張・周遊の起点、駅近で動線を短くしたい旅程、館内で食事を完結させたい人 -
向かない:
宿そのものに非日常や静寂を求める旅、海や自然の眺望を客室に望む人、小規模宿の密度を好む人
具体情報
- 最寄り駅: JR静岡駅から徒歩1分(駅ビル直結)
- 客室数: 250室、シティホテル
- 館内レストラン: イタリア料理・中国料理・日本料理・鉄板焼ほか
- 運営: JR東海ホテルズ
- 所在: 静岡市葵区黒金町56
Day 2 — 用宗、しらす漁港の家をまるごと借りる
二日目は市街を離れ、駿河湾に面した用宗(もちむね)漁港へ。静岡駅から東海道本線でわずか数分、しらす漁で知られる小さな港町に、宿の性格は都市から海辺へと一気に振れる。ここでの夜は、フロントもロビーもない、家一軒の独占である。
2. 日本色 NIHON IRO — 用宗
しらす漁港に佇む家を、まるごと一棟。伝統色を名に冠した全6棟の、海辺の静寂に置く二日目。
Media Picks Score: 91 / 100 6室(全棟一棟貸し)、一棟貸しの宿。
目安価格 ¥63,000–¥97,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
この宿は、港町に点在する一軒家を一棟ごと貸し切る分散型の構えを取る。客室は「翡翠」「金春」「胡桃」「檸檬」など日本の伝統色を冠した棟ごとに設えが異なり、台所を備えた家を二人で独占する密度が、ホテルとは別の時間を生む。現役の漁師が駿河湾へ案内するしらす漁船のクルージングや、近隣の用宗みなと温泉も射程に入る。海辺の静寂を、設計された孤独として味わえる稀有な一軒である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、一棟貸しならではのプライベート感、リノベーションの設えの丁寧さ、漁港の朝の静けさに評価が集まる傾向が見て取れる。一方で、フロント常駐型の手厚いサービスを前提とする旅には構えが合わない、という声も一定数うかがえる。自分たちで時間を編む滞在を好む読者に向く宿だと感じられる。
向く人 / 向かない人
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向く:
記念日・大人二人の静かな滞在、デザインリノベの空間を味わいたい人、港町と漁の文化に触れたい旅 -
向かない:
フロント常駐や館内設備の手厚さを望む旅、大人数のグループ、夕食を館内で完結させたい人
具体情報
- 最寄り駅: JR用宗駅から徒歩圏(静岡駅から東海道本線で数分)
- 構成: 港町の一軒家を棟ごとに貸し切る一棟貸し(全6棟)
- 体験: しらす漁船クルージング、母の手による朝食付きプランほか
- 周辺: 用宗みなと温泉、駿河湾の漁港
- 所在: 静岡市駿河区用宗
Day 3 — 日本平、富士と駿河湾を一枚の開口で受ける
最終日は標高約250mの日本平へ上り、旅程のクライマックスを丘の上に置く。眼下に清水港、その向こうに三保松原と駿河湾、晴れた日には正面に富士。海へ向かって開いてきた二泊三日の動線が、この一枚の眺望に収束する。
3. 日本平ホテル — 静岡市清水区
2012年に全面建替えられた「風景美術館」。富士山軸より5度回した開口が、駿河湾と富士を一枚に収める。
Media Picks Score: 92 / 100 80室、リゾートホテル。
目安価格 ¥50,000–¥89,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
この宿は2012年8月に全面建替えられ、日建設計の手によって「風景美術館」というコンセプトのもとに再生した。建物は富士山軸より5度回して配され、ロビーやレストランから望む景色が、浮世絵に描かれた富士と駿河湾の構図に重なるよう計算されている。6mワイドのパノラマウィンドウを持つ客室は、富士を正面に置くようベッドや机が配される。三保松原と清水港を眼下に収める立地と建築が一体となった、二泊三日の終着にふさわしい一軒である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、客室・ロビーから一枚の開口で受ける富士と駿河湾の眺望、庭園と建築の調和に高い評価が集まる傾向が読み取れる。一方で、丘の上に位置するため駅からのアクセスに時間を要する点を指摘する見方も一定数うかがえる。送迎バスや車での移動を前提に組み込めば、その立地はむしろ非日常の核として効いてくると感じられる。
向く人 / 向かない人
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向く:
富士と駿河湾の眺望を旅の終点に置きたい人、建築・ランドスケープに関心のある層、記念日の滞在 -
向かない:
駅近で動きやすさを最優先する旅程、徒歩観光を主にする人、天候による眺望の変動を許容できない旅
具体情報
- 最寄り駅: JR静岡駅からタクシー約25分/バス約35分(送迎バスあり)
- 客室サイズ: 富士を正面に望む45㎡の「日本平ツイン」ほか
- チェックイン: 14:00〜 / アウト 〜12:00
- 建築: 2012年8月全面建替、日建設計、地上6階。日本建築学会作品選集2015選出
- 立地: 標高約250mの日本平、富士・駿河湾・三保松原を一望
よくある質問
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. 富士の眺望を旅の核にするなら、空気の澄む晩秋から冬、そして梅雨明け直後が編集部の推す時期である。夏場は湿度で富士が霞みやすく、逆に冬の晴天日は稜線まで鮮明に見える。三保松原と駿河湾を絡めるなら、海の色がもっとも深くなる初夏の晴れ間が動線に映える。
Q. 二泊三日の移動はどう組むのが効率的ですか?
A. 初日は新幹線で静岡駅に入り市街泊、二日目は東海道本線で用宗へ移動して漁港泊、最終日に日本平へ上る順が、内陸から海へと無理なく流れる。用宗から日本平へは車移動が前提で、レンタカーかタクシー、または送迎を組み合わせると動線が締まる。
Q. 公共交通だけで巡れますか?
A. 静岡駅・用宗駅まではJR東海道本線で結ばれ、徒歩圏で完結する。一方、日本平ホテルは丘の上に位置するため、静岡駅・東静岡駅からの送迎バスやタクシー、路線バスの利用が現実的だ。三保松原もバス+徒歩で訪ねられる。
Q. 一棟貸しの宿は二人でも泊まれますか?
A. 日本色 NIHON IRO は港町の一軒家を棟ごとに貸し切る構えで、二人での滞在に向く。台所を備えた棟もあり、暮らすように泊まる時間を求める大人二人の旅に合う。フロント常駐型の手厚いサービスとは性格が異なる点だけ、あらかじめ踏まえておきたい。
Q. 富士が見えない日はどう過ごせますか?
A. 富士は天候に左右されるが、日本平ホテルからは雲がかかる日でも駿河湾と清水港、三保松原の松林が一枚の開口に広がる。庭園や建築そのものが見どころとして設計されているため、富士が隠れても風景美術館としての滞在は成立すると感じられる。
本記事の参考情報
・するが企画観光局(VISIT SHIZUOKA) — 静岡市・清水エリアの観光情報
・Wikipedia: 三保松原 — 松原と羽衣伝説、地理の背景
編集部から
三軒に通底するのは、土地の地層を読みながら宿を選ぶという視点である。東海道の宿場が重なる市街から、波打ち際を縫った旧道の名残を留める漁港へ、そして風景を額縁に収める丘の上へ。都市プレミアム、一棟貸し、現代建築リゾートと、宿の性格は内陸から海へ向かって段階的に変わり、価格帯もまた段階を踏む。駿河湾という一つの海を背に、これだけ異なる三つの夜を二泊三日で渡れる都市は、そう多くない。次はこの旅程を逆向きに、海から内陸へ遡って読むとき、土地はどんな表情を見せるだろうか。