北関東の建築旅は温泉地で完結しない。前橋・富岡・高崎を二泊三日で渡る本稿は、藤本壮介が手掛けた前橋の改修系アートホテルから始まり、富岡製糸場(明治5年・木骨煉瓦造)を擁する妙義山麓へ、最終日は戦後の駅前再開発の象徴である高崎駅直結棟へと至る。草津・伊香保といった既出の群馬温泉軸を意図的に外し、北関東の近代産業遺産と現代意匠を一本の線で結ぶ三軒を、編集部が選んだ。

Day ホテル エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1 SHIROIYA HOTEL 前橋市 95 25 ¥75–¥122k 藤本壮介設計、旧白井屋旅館の躯体を改修したアートホテル
2 妙義グリーンホテル&テラス 富岡市 88 97 ¥27–¥42k 妙義山中腹、自家源泉と製糸場アクセスを兼ねるリゾート
3 ホテルメトロポリタン高崎 高崎市 85 141 ¥22–¥28k JR高崎駅西口直結、戦後駅前再開発の系譜にあるJR系シティホテル
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

旅程の組み立て

東京駅から上越新幹線で高崎駅まで50分、両毛線に乗り換えて前橋駅までさらに16分。初日は前橋でアートと建築を歩き、晩は白井屋ホテルへ。二日目は朝の前橋を発ち、信越本線で松井田または磯部経由のレンタカーで富岡製糸場へ。午後は妙義山中腹の宿に入り、自家源泉と妙義山の岩稜を望む。最終日は再び高崎へ戻り、戦後の駅前再開発が形にした高崎駅西口の連坦を歩いて旅を閉じる。桑の新緑から初夏、製糸場の煉瓦色と山の緑が最も鮮やかになる季節を選んだ。

Day 1. SHIROIYA HOTEL(白井屋ホテル) — 前橋市

藤本壮介が旧白井屋旅館の躯体を露出させたまま改修した、前橋の文化拠点。25室、二泊三日の初日に最も合う一軒。

Media Picks Score: 95 / 100  25室、改修系デザインホテル。

目安価格 ¥75,000–¥122,000 / 泊 (2名1室・通常期)


SHIROIYA HOTEL — 前橋・本町 · 藤本壮介設計、既存ホテル躯体を活かした吹き抜けアトリウム
PHOTO: SHIROIYA HOTEL — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

創業300年を超える旧白井屋旅館が一度閉業し、藤本壮介の設計で2020年に再開した経緯そのものが、この宿を北関東の建築旅の起点に据える理由になる。既存ホテルの鉄筋コンクリート躯体を解体せず、内部を吹き抜けに変えてアトリウムを生んだ「ヘリテージタワー」と、土を盛った「グリーンタワー」の二棟構成。ジャスパー・モリソンや杉本博司ら国内外の作家が手掛けた4つのスペシャルルームを含め、25室すべての客室が異なる設計に基づく。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、建築・アートそのものを目当てに来る滞在者が多く、客室の独自性と共用部のスケール感への評価が突出している。レストランの五年連続Gault&Millau掲載という事実が示すように、食の評価も建築と切り離されずに語られる傾向が見て取れる。一方で、館内全体がアート作品の集合体である性質上、設備の使い勝手は一般的なシティホテルの作法とは別物として捉える必要がある。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    建築・現代美術関心層、Casa BRUTUS的視点で宿を選ぶ層、前橋アートシーンを面で歩きたい旅程
  • 向かない:
    予算重視の出張、建築的演出より定型的サービスを求める層、コンクリート躯体の存在感を「冷たい」と感じる人

具体情報

  • 最寄り駅: JR前橋駅から徒歩約15分(タクシー5分)、中央前橋駅から徒歩約7分
  • 客室数: 25室(ヘリテージタワー+グリーンタワーの二棟構成)
  • 設計: 藤本壮介建築設計事務所
  • 開業: 2020年12月(旧白井屋旅館の躯体を活用した改修)
  • 食事: 「the RESTAURANT」群馬の食材を用いたフレンチ/パティスリー・ベーカリー・バー・茶室・サウナ併設
  • 受賞: Gault&Millau 2026まで5年連続掲載


Day 2. 妙義グリーンホテル&テラス — 富岡市

妙義山中腹、地下2000mから引く自家源泉と97室規模を持つ、富岡製糸場アクセスの拠点。

Media Picks Score: 88 / 100  97室、自家温泉付きリゾートホテル。

目安価格 ¥27,000–¥42,000 / 泊 (2名1室・通常期)


妙義グリーンホテル&テラス — 富岡・妙義山麓 · 妙義山の岩稜を背景に建つ97室のリゾート
PHOTO: 妙義グリーンホテル&テラス — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

富岡製糸場(明治5年・1872年開業、世界遺産)の見学を一日の主軸にしたとき、宿は街中ではなく妙義山麓に取りたい。理由は、製糸場の煉瓦と妙義の奇岩という、群馬県西部を語る二つの素材を一望のもとに繋ぐためだ。本ホテルは地下2000mから自噴する炭酸水素塩泉を客室の窓越しに山稜と組み合わせて見せる、北関東では数少ない設計を持つ。日本三大奇景の一つ・妙義山を背景にした立地そのものが、戦後リゾート建築の系譜を体感させる。

集約レビューの傾向

公開レビューデータの集約からは、温泉と料理に対する一定以上の評価と、客室の窓から見える妙義の岩稜への高い評価が読み取れる。バイキング形式の食事への意見は分かれるが、地元食材を活かす方針への評価軸は明確に存在する。富岡製糸場までは車で約25分、世界遺産巡りの拠点として機能する点が、ビジネスホテルとは別の価値として評価されている傾向にある。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    富岡製糸場と妙義山を組み合わせる旅程、温泉付きの中規模リゾートを求める層、レンタカー利用者
  • 向かない:
    公共交通機関のみで動く旅程、現代意匠を求める層、繁華街での夜歩きを望む人

具体情報

  • 所在地: 群馬県富岡市妙義町菅原2678(妙義山中腹)
  • 客室数: 97室(シングル/ツイン/和室/和洋室)
  • 温泉: 妙義温泉(炭酸水素塩泉、地下2000mから自噴)
  • 富岡製糸場まで: 車で約25分
  • 食事: 地元食材中心のバイキング形式
  • 併設: 妙義カントリークラブ(ゴルフ場)


Day 3. ホテルメトロポリタン高崎 — 高崎市

JR高崎駅西口直結、141室。戦後駅前再開発の連坦を歩いて旅を閉じる、最終日に置くべき一軒。

Media Picks Score: 85 / 100  141室、JR系シティホテル。

目安価格 ¥22,000–¥28,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ホテルメトロポリタン高崎 — 高崎駅西口 · JR系シティホテル、駅直結の連坦動線
PHOTO: ホテルメトロポリタン高崎 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

本旅程の最終日に高崎駅直結棟を選ぶのは、戦後の駅前再開発が形にした連坦の動線そのものを、この宿が体現するからだ。JR東日本グループのシティホテルとして1982年に開業し、複数回の改装を経て現在の姿に至る。141室の規模は前橋・富岡の二軒と対比すると突出して大きく、戦後の鉄道網と一体化したホテル建築という戦後日本の都市計画の特徴を、滞在者が空間として確かめられる。最終日の上越新幹線出発まで、徒歩での街歩きが完結する立地でもある。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集約すると、駅直結の立地と接客の安定性に対する評価が、JR系ホテルらしく一貫して高い。客室は2018年前後の改装で更新されているが、建物自体は1980年代開業のため、最新の意匠を期待する層とは方向性が異なる。朝食会場「ル・シエル」で提供される群馬県産食材を使った地産メニューへの評価は、駅前ホテルの定型を超えて評価されている傾向にある。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    新幹線利用の出張、駅前完結型の旅程、JRの導線設計を体験したい層、複数日程の旅の締めくくり
  • 向かない:
    静かな個別宿を求める層、現代建築の最先端を体験したい旅程、車中心の移動者

具体情報

  • 最寄り駅: JR高崎駅西口直結(徒歩約2分の連絡通路)
  • 客室数: 141室(シングル/ダブル/ツイン/スイート)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 開業: 1982年(複数回の改装、客室は2018年前後に更新)
  • 食事: ル・シエル(地産食材のレストラン)/中国料理/和食
  • 運営: JR東日本グループ(日本ホテル株式会社)


よくある質問

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 桑の新緑から初夏、5月中旬から6月中旬を編集部は推す。富岡製糸場の煉瓦色と妙義山麓の山桑の緑が最も鮮やかに対比される。梅雨入り前の晴天日は、白井屋ホテルのアトリウムにも光が深く入る。盛夏は妙義山の岩稜が霞みやすく、紅葉期は車道の混雑が読みづらい。

Q. 公共交通機関だけで完結しますか?

A. 二日目の富岡製糸場〜妙義グリーンホテル間はバス便が限られるため、高崎駅または富岡駅でレンタカーを借りるのが現実的。前橋〜高崎間と高崎〜東京間はJRで完結する。完全な公共交通縛りの場合、二日目の宿を富岡市街地に変更する選択も生まれる。

Q. 予約のタイミングは?

A. 白井屋ホテルは室数25と限定的なため、週末・連休は3〜4ヶ月前から埋まる。妙義グリーンとメトロポリタン高崎は規模が大きく、2週間前でも空きが見つかるケースが多いが、季節要素のあるテーマ(5〜6月の新緑、10〜11月の紅葉)では早期の方が安全。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. 白井屋ホテルは未就学児の同伴可だが、館内全体がアート作品の集合体である性質上、家族旅向きの設計ではない。妙義グリーンとメトロポリタン高崎はファミリー客に十分な客室規模と運営体制がある。

Q. インバウンド客の利用は?

A. 白井屋ホテルは英語版サイト・スタッフ対応とも整備されており、海外建築誌からの取材も多い。妙義グリーンは日本語中心、メトロポリタン高崎はJR系として英語対応に標準的な体制を持つ。

本記事の参考情報

富岡製糸場 公式サイト(富岡市) — 世界遺産・明治5年開業の木骨煉瓦造の歴史
心にググっと観光ぐんま — 群馬県観光物産国際協会による広域情報
Wikipedia: 白井屋ホテル — 改修建築としての沿革

編集部から

群馬県と聞いて温泉地ではない宿の名が浮かぶ人は、まだ多くない。だが前橋の白井屋ホテルが2020年に開いたことで、北関東の現代建築の地図が更新された。富岡製糸場という明治の産業遺産と、藤本壮介の改修系アートホテル、そしてJR系の駅直結棟という三軒は、それぞれ別の年代に属する建築が一本の動線で繋がる稀な例として、二泊三日の旅程に乗せる価値がある。次は同じく北関東で、栃木県・那須塩原と益子のクラフトと建築を結ぶ角度を書きたい。