京都を二泊三日で歩くなら、町家建築と現代意匠を一本の線で結ぶ旅程を編集部は推したい。初日は西陣・御所西に残る大型京町家へ、二日目は岡崎の近代和館と現代建築を抜けて南禅寺界隈の現代意匠系へ。建物が背負う時間の幅を、宿そのもので比べる三日間である。築百年級の町家から、2021年竣工の現代和風建築まで——同じ「和」でも、左官や木組み、光の扱いがどう変わったかを、自分の足取りのなかで確かめる構成にした。初夏、青もみじが疏水沿いを覆う頃が、この旅程に最も合う。
| Day | 宿 | エリア | Score | 客室 | 目安価格 | 建築の核 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Nazuna 京都 御所 | 上京区・御所西 | 90 | 7 | ¥121k–¥157k | 2棟の大型京町家を改修した一棟集合型 |
| 2 | MALDA KYOTO | 中京区・烏丸御池 | 92 | 3 | ¥51k–¥60k | 1フロア60㎡・ババグーリの設えによる現代町家 |
| 3 | ふふ京都 | 左京区・南禅寺界隈 | 93 | 40 | ¥111k–¥220k | 2021年竣工・全室温泉付きの現代和風建築 |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
Day 1 — 西陣から御所西へ、町家の時間に泊まる
初日は西陣の織機跡が点在する界隈を歩き、夕刻に御所西の大型京町家へ入る。糸へん産業が育てた格子と通り庭の空間文法を、まず体に入れておく。翌日からの現代建築を、この基準点から見るための一日である。
1. Nazuna 京都 御所 — 上京区・御所西
2棟の大型京町家を改修した七室。通り庭と坪庭を残したまま、町家を現代の宿に翻訳した一軒。
Media Picks Score: 90 / 100 7室、京町家改修の小規模旅館。
目安価格 ¥121,000–¥157,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
御所の西、西陣にほど近い静かな住宅地に、2棟の大型京町家を改修して2019年に開いた宿である。通り庭の土間、坪庭の採光、太い梁といった町家の骨格を残しながら、客室には現代の寝具と水回りを通した。各室が和菓子を主題に意匠を変え、共用ラウンジでは滞在中の飲み物が供される。建物そのものが教材になる、旅程の出発点に置きたい一軒と言える。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、町家の構造を生かした空間づくりと、小規模ゆえの行き届いた運営への評価が安定して確認できる。静けさと立地の良さを挙げる声が目立つ一方、町家建築固有の段差や動線は人を選ぶ傾向も読み取れる。建物の来歴を楽しむ層と相性が良い宿である。
向く人 / 向かない人
-
向く:
町家建築の構造を体験したい大人二人旅、御所・西陣を歩いて回りたい旅程、静けさを優先する滞在 -
向かない:
段差を避けたい滞在(町家構造のため)、大浴場を望む人、繁華街至近を求める旅程
具体情報
- 立地: 京都御苑の西、地下鉄烏丸線「今出川」駅から徒歩圏(タクシー利用可)
- 客室数: 7室(2棟の大型京町家を改修)
- 食事: 朝食付き(炭火・かまどを用いた京の朝餉)
- 共用部: ラウンジでフリードリンク提供
- 開業: 2019年
Day 2 — 烏丸御池の現代町家で、意匠の更新を見る
二日目は御所から烏丸御池へ南下し、現代の作家が手がけた町家系の宿に入る。前夜の伝統的な町家と、ミニマルに抽象化された現代の和——同じ都心の路地でも、設えの思想がどう変わったかを一日で比べる。午後は地下鉄東西線で岡崎へ抜け、近代建築を歩いておく。
2. MALDA KYOTO — 中京区・烏丸御池
各室約60㎡・1フロアを丸ごと使う三室。ババグーリの設えでまとめた、抑制された現代町家。
Media Picks Score: 92 / 100 3室、カフェ併設の小規模ホテル。
目安価格 ¥51,000–¥60,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
烏丸御池の路地に2018年に開いた、一日三組限定の宿である。各室は約60㎡(約18坪)で2階・3階・4階の各フロアを丸ごと占有し、赤・青・墨の色を主題に設えを変える。朝食はヨーガンレールの社員食堂由来のレシピで、ババグーリの器で客室に供される。装飾を削ぎ落とした現代の和——前夜の伝統的な町家から、意匠がどう更新されたかが一目でわかる対比軸として置いた。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、客室の広さと素材を抑えた設え、併設カフェの完成度への評価が高い水準で確認できる。三組限定の静けさと、丁寧な朝食を挙げる声が目立つ。一方で大型ホテルのような設備網羅性は持たず、空間と食の質に価値を置く層に向く宿である。
向く人 / 向かない人
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向く:
ミニマルな現代意匠を好む大人二人旅、広い客室で静かに過ごしたい滞在、デザインと食に投資したい人 -
向かない:
大浴場・温泉を望む人、フロント常駐の手厚い対応を求める旅程、大人数での利用
具体情報
- 最寄り駅: 地下鉄「烏丸御池」駅3-1出口から徒歩約5分
- 客室サイズ: 各室約60㎡(約18坪)・1フロア占有、定員3名
- チェックイン: 15:00〜19:00 / アウト 〜11:00
- 食事: 朝食付き(客室提供)・併設カフェあり
- 開業: 2018年7月
Day 3 — 南禅寺界隈の現代和風建築で結ぶ
最終日は岡崎から南禅寺界隈へ。名勝・無鄰菴や琵琶湖疏水に隣り合う一角で、2021年竣工の現代和風建築に泊まる。町家の坪庭が抽象化され、近代和館の数寄屋が現代の素材で再構成された——三日間で辿った系譜の到達点を、ここで確かめる。
3. ふふ京都 — 左京区・南禅寺界隈
2021年竣工、全室に檜の温泉。南禅寺界隈の別荘庭園群に連なる現代和風建築の一軒。
Media Picks Score: 93 / 100 40室、全室温泉付きの現代和風リゾート。
目安価格 ¥111,000–¥220,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
南禅寺界隈、名勝・無鄰菴や琵琶湖疏水に隣り合う一角に2021年竣工した、全40室の現代和風建築である。全室に檜の温泉浴槽を備え、庭を望みながらの食事を旅館形式で供する。明治期の政財界人が別荘庭園を競ったこの地は、近代和館と作庭の集積地でもある。三日間で辿った「町家→現代町家→近代和館の系譜」の到達点として、現代の素材と設備で和を再構成した姿を確かめるのに適した一軒と言える。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、全室温泉という設備の希少性と、南禅寺界隈という立地、庭を生かした建築への評価が高い水準で確認できる。静謐な滞在環境を挙げる声が目立つ一方、料金帯は三軒のなかで最も幅が広く、時期による変動も大きい。記念日や特別な滞在に充てる層と相性が良い。
向く人 / 向かない人
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向く:
客室温泉を重視する滞在、記念日・特別な二人旅、南禅寺・無鄰菴を歩いて巡りたい旅程 -
向かない:
予算を抑えたい旅程、町家のような小規模・一棟貸しの密度を求める人、繁華街至近を望む滞在
具体情報
- 立地: 南禅寺界隈、名勝・無鄰菴および琵琶湖疏水に隣接(地下鉄東西線「蹴上」駅圏)
- 客室数: 40室(全室に檜の温泉浴槽)
- 食事: 朝食・夕食付き(庭を望む旅館形式)
- 設備: 全室温泉付き・小規模ラグジュアリー仕様
- 竣工 / 開業: 2021年(4月開業)
よくある質問
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. 初夏(5月下旬〜6月)の青もみじ期を編集部は推す。南禅寺界隈の疏水沿いと無鄰菴の庭が最も濃く色づき、夏の繁忙前で街の密度も落ち着く。秋の紅葉期は美しい反面、岡崎・南禅寺一帯が混雑し、宿の料金も上振れする傾向がある。
Q. 三軒の移動はどう繋ぎますか?
A. 御所西(Day1)から烏丸御池(Day2)は地下鉄烏丸線で数駅、烏丸御池から南禅寺界隈(Day3)は地下鉄東西線で「蹴上」または「東山」へ抜けられる。いずれも荷物を預けて徒歩・地下鉄で繋げる距離で、車は必須でない。
Q. 予算はどのくらい見ておくべきですか?
A. 1泊2名で MALDA は ¥51,000〜¥60,000、Nazuna 御所は ¥121,000〜¥157,000、ふふ京都は ¥111,000〜¥220,000 が通常期の目安。ふふ京都は時期による変動が大きいため、日程に幅があるなら平日を軸に組むと振れを抑えやすい。
Q. 建築を比べるなら、どこを見ておくべきですか?
A. 二日目午後の岡崎が結節点になる。谷口吉生設計の京都国立近代美術館(1986年竣工)と、青木淳・西澤徹夫の改修による京都市京セラ美術館(2020年リニューアル)が徒歩圏に並ぶ。町家の坪庭が現代建築でどう抽象化されたかを、この二館で確かめてから南禅寺界隈の宿へ向かうと理解が深まる。
Q. インバウンドの旅行者でも滞在しやすいですか?
A. 三軒とも訪日客の利用実績があり、町家・現代意匠・現代和風という性格の違いから、和の建築を主題に旅したい層に支持されている。一棟・小規模の宿は事前のチェックイン段取りを確認しておくと滞在がなめらかになる。
本記事の参考情報
・臨済宗大本山 南禅寺 公式サイト — 南禅寺界隈の歴史と境内情報
・京都市京セラ美術館 — 青木淳・西澤徹夫による2020年改修建築
・京都国立近代美術館 — 谷口吉生設計(1986年竣工)
・Wikipedia: 西陣 — 西陣の歴史と地理的背景
編集部から
三軒に通底するのは、「和の建築をどの時代の手つきで現代に通すか」という一点である。Nazuna 御所は躯体を残して翻訳し、MALDA は間口の文法を引き継ぎながら引き算で更新し、ふふ京都は近代和館の系譜を現代の素材と設備で再構成した。同じ京都市内を二泊三日歩くだけで、約三百年分の意匠の更新が一本の線で繋がる。次は、岡崎の近代和館一軒を主題に据えた深掘りも書きたい。あなたなら、町家と現代和風、どちらの夜を旅の締めに置くだろうか。