麻布台ヒルズの低層に挿入された一棟、ジャヌ東京。アマンの姉妹ブランド第一号機として、2024年3月13日に開業した。総客室数122、平均床面積60平米、地下に4,000平米超を展開するウェルネスセンター。設計はDenniston Architects(ジャン=ミシェル・ガティ)、麻布台ヒルズ全体のマスタープランはペリ・クラーク&パートナーズ。本稿では、この建築を平面と断面の双方から読み、東京の都市プレミアム文脈の中で位置づけ直す。

Media Picks Score: 91 / 100  122室(うちスイート33室)、ラグジュアリーホテル。

目安価格 ¥202,000–¥380,000 / 泊 (2名1室・通常期)

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)。


ジャヌ東京 — 港区麻布台 · <!-- FACT_EDIT_f-010_START original=麻布台ヒルズ レジデンスA低層に開業した122室のラグジュアリーホテル” loading=”lazy” style=”width:100%;height:auto;display:block;border-radius:2px;” />
PHOTO: ジャヌ東京 公式 — 公式サイトを見る →

麻布台ヒルズに挿入された一棟という出自

森ビルが2023年11月に開業した複合再開発、麻布台ヒルズ。総延床面積約86万平米、敷地内に住宅2棟・オフィス・商業・文化施設・国際校・チャペル・寺院までを抱える「都市の中の都市」として構想された。マスタープランの責任設計はペリ・クラーク&パートナーズ(César Pelli後継事務所)、外構と低層部の有機的造形はトーマス・ヘザウィック・スタジオ。ジャヌ東京は、その敷地内でレジデンスAの低層階(1-13階)に挿入された。敷地北側、神谷町と六本木一丁目に挟まれた地形のもっとも内側、外苑東通りからもっとも遠ざかった位置に置かれている。

客室・パブリックスペースの内装設計を担ったのはマレーシアを拠点とするDenniston Architects、主幹はジャン=ミシェル・ガティ。ガティは1980年代以降アマンの主要施設を多数手がけてきた建築家であり、ジャヌ東京の主担当である(アマン東京2014はKerry Hill Architects、アマンプリ1988はEd Tuttleなど、アマンの主要施設は複数の建築家が分担している)。ジャヌ東京はアマン直系ではなく姉妹ブランドだが、設計の連続性は明らかにアマンの系譜下にある。「ヤブ・プシェルベルスキーが設計した」という巷説は、ヤブが手がけたのは麻布台ヒルズ内の別施設(ジャヌ東京ではない)に起因する誤解で、ジャヌ東京の主担当はガティであることを最初に確認しておきたい。

客室の寸法計画 — 60平米という平均が示すもの


ジャヌ東京 客室 — 麻布台 · 平均60平米、天井高を確保した回遊型のリビング/ベッドスペース構成
PHOTO: ジャヌ東京 客室 — 公式サイトを見る →

122室のうち最小カテゴリーはプレミアルーム(55平米)、最上位はジャヌスイート(284平米)。スイート33室を含めても、平均60平米という値は東京の都市プレミアム帯としては破格に大きい。アマン東京の最小カテゴリーが71平米と更に大きいことを踏まえると、ジャヌは「アマンより小さく、ただし都市の常識より大きい」という中間帯を狙って寸法を切ったことが分かる。

客室内部は、リビングとベッドスペースを明確に分離する回遊型のプラン。バスルームは独立した一室として確保され、シャワーブースと浴槽が分かれている。床はオーク材、左官の壁、家具は籐とリネンとブロンズ。素材数は意図的に絞られ、テクスチャの濃淡で空間を分節する手法はガティの一貫した語彙である。窓は床から天井までの一枚硝子、向きによっては東京タワー、向きによっては緑地と寺社の屋根が見える。客室一室の寸法は、ホテルの政策決定がもっとも凝縮して現れる箇所である。「都市の真ん中で60平米を確保する」という選択そのものが、このホテルの位置取りを規定している。

4,000平米のウェルネスセンター — 平面の核としての地下


ジャヌ東京 ウェルネス — 麻布台 · 25mプールと8つの専用スタジオを擁する4,000平米超のウェルネスフロア
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ジャヌ東京がアマン本体と決定的に違うのは、ウェルネスを「滞在の付帯機能」ではなく「滞在の主動詞」として置いたことである。地下に展開する4,000平米超のウェルネスセンターは、東京のラグジュアリーホテルの中でも最大級。25mプール、ハマム(トルコ式蒸気浴)、バーニャ(ロシア式)、ハイドロセラピーバス、ピラティス専用スタジオ、ボクシング/サーキット専用スタジオ、ヨガ&サウンドスタジオ。スパトリートメントルームは7室。

動線設計を読むと、ウェルネスは単独ゾーンではなく、館内のすべての階から短い垂直移動で到達できる位置に置かれている。客室から着替えてプールへ降りる、午前の運動後にダイニングへ上がる、夜にハマムへ戻る — この往復が一日に何度も繰り返されることを前提とした断面計画。「ホテルに滞在するついでにスパに行く」のではなく、「スパに滞在するついでに眠る」という反転がここで成立する。アマン東京の地上33階に置かれた30mプールが「街の眺望と一体になる垂直の水盤」だとすれば、ジャヌ東京の地下プールは「都市から切断された水平の核」である。同じグループのもとで、二つのまったく異なる空間概念が東京の中心部に同時に提示されたことになる。

館内ダイニング8軒 — 都市型外食前提を覆す設計


ジャヌ東京 ダイニング — 麻布台 · 8つのレストラン&バーを館内に擁する大規模ダイニングプログラム
PHOTO: ジャヌ東京 ダイニング — 公式サイトを見る →

東京の都心ラグジュアリーホテルの多くは、「街に外食の選択肢があるからホテル内ダイニングは絞る」という設計思想を採る。ジャヌ東京はその逆で、館内に8つのレストラン&バーを抱えた。和食「飯倉」、炭火懐石「炭(Sumi)」、現代中華「Hu Jing」、グリル「Janu Grill」、イタリアン「Janu Mercato」、パティスリー「Janu Patisserie」、ラウンジ&ガーデンテラス、そしてジャヌ・バー。立地が麻布台ヒルズの内側で、外苑東通りまで一定の距離があることを踏まえると、これは単なる物量主義ではなく「滞在者を館内に滞留させる」明確な意図を持った設計である。

料理長クラスでは、炭(Sumi)が炭火による割烹仕立て、Hu Jingがグランドハイアット東京「China Room」やJasmineグループでキャリアを重ねた山口豊シェフが率いるモダン広東料理。ダイニング群は宿泊客以外の利用にも積極的に開かれており、館内の通り抜け動線とダイニング動線は明確に分離されている。日中の麻布台ヒルズ来場者にとってはレストラン目当てで訪れる場所、宿泊客にとってはチェックインから翌朝のチェックアウトまで館外に出る必要のない都市内リゾート — 二つの異なる利用層が一棟の中で交わらないように設計されている。

集約レビューが映すこの宿の本質

2024年3月開業のため、公開レビューデータを集計しても評価本数はまだ蓄積途上である。ただし国内外の業界誌・建築誌・トラベルメディアによる初年度の取材コメントを横断的に読み取ると、評価軸は概ね三つに整理できる。第一に客室の寸法と素材の質感、第二にウェルネスセンターの規模と運営密度、第三にダイニング群の幅と質。一方、論点として残るのは、ジャヌが標榜する「より社交的でアクティブなアマン」というコンセプトが、アマン東京の徹底した静謐との対比でどう機能するか、という点。同じグループの二施設が同じ都市で並走することを、両者の差別化として読むか、あるいはブランドの希釈と読むかは、利用層によって意見が分かれている。

立地と周辺 — 麻布台ヒルズの内側という選択

最寄りは東京メトロ日比谷線・神谷町駅(5番出口から麻布台ヒルズ直結、ジャヌ東京エントランスまで徒歩約10分)、南北線・六本木一丁目駅(徒歩約7分)、大江戸線・赤羽橋駅(徒歩約12分)。羽田空港からはタクシーで30〜45分、リムジンバスでも札の辻経由のアクセスがある。半径500m圏には六本木ヒルズ、東京タワー、芝公園、増上寺、有栖川宮記念公園。徒歩圏に大使館街、慶應義塾大学三田キャンパス、複数の老舗料亭。都心の中でも、商業的喧騒と寺社境内の静けさが密度高く折り重なる地区である。麻布台ヒルズの内側に入ってしまうと、敷地内のヘザウィック造形の散歩道、現代美術のチームラボボーダレス、約6,000平米の中央広場、寺院・チャペルなどが揃い、宿泊客は実質的に半日〜一日を敷地内だけで過ごすこともできる。

こんな旅人に

  • 向く:
    建築・空間設計に関心がある旅程、ウェルネスを滞在の主目的に置く長期滞在、海外からの招客接待で麻布台ヒルズの中で完結させたい用途、東京で2泊以上の都市滞在
  • 向かない:
    1泊で観光地を効率よく巡る旅程(立地は都心だが移動の起点としてはやや内側)、客室の絶対静寂を最優先する人(同グループならアマン東京が向く)、宿泊単価を抑えたい滞在

具体情報

  • 所在地: 東京都港区麻布台1-2-2 麻布台ヒルズ レジデンスA
  • 最寄り駅: 東京メトロ日比谷線 神谷町駅(直結・徒歩約10分) / 南北線 六本木一丁目駅(徒歩約7分)
  • 客室数: 122室(うちスイート33室)
  • 客室サイズ: 55〜284平米(平均約60平米)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜12:00
  • ウェルネス: 4,000平米超、25mプール、ハマム、バーニャ、トリートメントルーム7室
  • ダイニング: 館内8軒(飯倉/Sumi/Hu Jing/Janu Grill/Janu Mercato/Janu Patisserie/Lounge & Garden Terrace/Janu Bar)
  • 開業: 2024年3月13日
  • 設計: Denniston Architects(ジャン=ミシェル・ガティ) / 麻布台ヒルズ全体: Pelli Clarke & Partners + Heatherwick Studio
  • 運営: Aman Group(アマン姉妹ブランド世界第一号機)

Media Picks Score

91 / 100 — 立地(麻布台ヒルズ内側という都市プレミアム)/設備(4,000平米ウェルネス・8ダイニング)/体験(アマングループのオペレーション)/価格感(¥202,000〜¥380,000 を破綻なく説明する規模)/編集適合度(設計事務所の手癖を読む意義)、五軸すべてで上位。新規開業のため公開レビューの本数は限定的だが、ブランド系譜と建築の読み込み余地で編集部は91点を付した。

よくある質問

Q. アマン東京とジャヌ東京、どちらを選ぶべきですか?

A. アマン東京は大手町タワー33階以上に置かれた垂直のリトリート、ジャヌ東京は麻布台ヒルズ低層の水平の都市内ホテルで、空間概念がほぼ対照的である。静謐と眺望を優先するならアマン東京、ウェルネスと館内ダイニングを滞在の主軸に置くならジャヌ東京。同じグループながら、選び方は別物として整理した方が良い。

Q. 設計はヤブ・プシェルベルスキーですか?

A. 違う。ジャヌ東京の客室・パブリックスペース設計はDenniston Architects(ジャン=ミシェル・ガティ)である。ヤブ・プシェルベルスキーが手がけたのは麻布台ヒルズ内の別施設で、しばしばジャヌの設計者として混同されることがある。麻布台ヒルズ全体のマスタープランはPelli Clarke & Partners。

Q. 滞在で重視すべきはどの体験ですか?

A. 編集部の推しは地下ウェルネスセンター(4,000平米超、25mプール)と、館内の炭火懐石「Sumi」あるいは現代中華「Hu Jing」のディナー。客室の60平米平均サイズも、東京の都市プレミアム帯では他に代替が少ない数値で、半日以上を客室で過ごす旅程と相性が良い。

Q. 麻布台ヒルズ内でジャヌ以外の選択肢は?

A. 麻布台ヒルズ内にホテルはジャヌ東京のみ(2026年6月時点)。複合施設の内側で完結する滞在は、現状ジャヌだけが提供できる。

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 編集部が推す時期は5月下旬〜6月上旬(梅雨入り前の新緑と中央広場の散策が両立する)と、11月(銀杏の色付きと館内ウェルネスの利用密度の上昇期)。真夏は屋外動線が制約されるが、地下ウェルネスは通年完結する設計のため、季節依存は少ない。

編集部から

ジャヌ東京は、アマンが自らの語彙を別ブランドに転写する初の試みであり、東京の都市プレミアム市場における「アマン系の二棟体制」を確立した一棟である。ガティが東京で二度目に手がけた仕事として、アマン東京との空間概念の差を読み比べることそのものが、この建築の最大の楽しみと言える。「都市プレミアム」というカテゴリの中で、垂直と水平、眺望と切断、静謐と社交、二つの軸が一つの都市の中心部に同時に提示された意味は、建築誌・トラベルメディアの双方で今後数年論じられ続けるだろう。次に書きたいのは、麻布台ヒルズ内のヘザウィック造形と、ペリ・クラークが計画したガーデンプラザ低層部の関係である。

本記事の参考情報

Janu Tokyo 公式サイト — 客室・ウェルネス・ダイニングの一次情報
麻布台ヒルズ 公式 — 複合再開発の全体構成
Wikipedia: 麻布台ヒルズ — 敷地・延床・設計事務所の背景

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