アマンが初めて世に出した姉妹ブランド〈ジャヌ〉。その一号店が、麻布台ヒルズのレジデンスA低層に122室で開いた。設計はアマンを世界で十数軒手がけたデニストン設計事務所、ジャン=ミシェル・ギャシー。全室55㎡以上という都市ホテルとしては抑えた密度と、約4,000㎡に及ぶ都内最大級のウェルネス棟。垂直に積み上がる都心のラグジュアリーが、どこに余白を割いたのか。開業から日が浅く、輪郭がまだ街になじみきらない今だからこそ、一棟をゆっくり読む価値がある。本稿は、その設計言語と滞在の質を、編集部の視点で観察した記録である。

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。開業から日が浅く、集約できる公開レビューが限定的なため、本稿のスコアは立地・設備・体験の編集評価に比重を置いた参考値です。


ジャヌ東京 — 東京・麻布台ヒルズ · アマン姉妹ブランド〈ジャヌ〉の世界一号店、デニストン設計の122室
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歴史と建築 — アマンが引き算しなかったブランド

ジャヌはサンスクリット語で「魂」を意味する。アマンが四十年かけて磨いた静けさの語法を土台にしつつ、より開かれた社交性を持たせた姉妹ブランドとして構想された。その最初の一軒が東京に置かれた意味は小さくない。設計を託されたのは、アマン東京をはじめ数多くのアマンを手がけたデニストン設計事務所。代表のジャン=ミシェル・ギャシーは1955年ベルギー生まれ、1983年に自身の設計事務所デニストンを興した建築家である

ギャシーがジャヌ東京で採ったのは、純粋な和ではなく、日本の伝統的なディテールに欧州のエッセンスを重ねる手法だった。石と木、間接光、水平に伸びる庇のリズム。そのどれもが主張を抑え、全体の統一感へと収斂していく。「すべてはバランスの問題」という設計者の言葉どおり、素材と光の配分に編集の手つきが見える。麻布台ヒルズという垂直の複合体のなかで、レジデンスA低層の1〜13階に横へ広がる骨格を通した点に、このブランドの読み筋がある。


ジャヌ東京 スイートのラウンジ — 東京・麻布台 · 全室55㎡以上、デラックスからジャヌスイート284㎡まで
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滞在の体験 — 密度を抑えるという選択

客室は122室。デラックスで55㎡、最上位のジャヌスイートで284㎡と、都市ホテルとしては明確に密度を抑えた設計になっている。同じ延床であれば客室数をもっと増やせたはずで、そこを増やさなかった判断こそがこのホテルの性格を決めている。窓の外には東京タワーや麻布台の眺望が広がり、室内は木肌と土色の左官、抑えた照度でまとめられる。装飾で語らず、余白で語る。過剰を足さない姿勢が、滞在の時間をゆっくりと引き延ばす。

食のプログラムも一棟の核に据えられている。炭火の鮨〈スミ〉から終日使えるイタリアン〈ジャヌ メルカート〉まで、レストランとバー、パティスリーを含む8つのダイニング&ソーシャル空間が館内に並ぶ。宿泊者だけでなく街の人が交わる社交の場を内包する点が、静けさに徹してきた本家アマンとの明確な差異であり、〈ジャヌ〉というブランドの実験でもある。

ウェルネス — 一棟のもう一方の主役

このホテルを語るうえで外せないのが、約4,000㎡に及ぶウェルネス棟である。都内のホテルでは最大級の規模で、25mのインドア温水プールとラウンジプール、広大なジム、複数のトリートメントルームを擁する。客室帯と拮抗するボリュームをスパに割いた配分そのものが、〈ジャヌ〉の思想の表明といってよい。滞在の目的地が「部屋」から「棟」へと移るような、都市ステイケーションの新しい重心をここに見る。


ジャヌ東京 ウェルネス — 東京・麻布台 · 約4,000㎡、都内最大級のスパ棟と25mインドアプール
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集約レビューが映すこの宿の輪郭

開業からの日が浅く、公開レビューの集約はまだ厚みを持たない。それでも現時点で読み取れる傾向を挙げれば、評価の軸はデザインとウェルネス、そして食の三点に集まっている。空間の抑制と素材感、都心にありながら喧噪を遠ざける動線が支持の中心にあり、一方で価格帯は明確に高い水準に置かれている。都市の非日常を「棟ごと」買う滞在として捉えるか、宿泊単体の対価として見るかで、受け取り方が分かれる一軒だと言える。集約が厚みを増すにつれ、この輪郭はさらに明確になっていくはずだ。

立地と周辺 — 麻布台ヒルズという地形

ジャヌ東京が入るのは、2023年に街開きした麻布台ヒルズのレジデンスA。神谷町駅から地下でつながり、六本木一丁目駅も徒歩圏にある。羽田空港からは車でおよそ30分、東京駅からも15〜20分と、都心の要に位置する。麻布台ヒルズには森JPタワーやチームラボの施設、緑地の広場が同居し、ホテルはその文化と自然の層のなかに置かれている。滞在を宿の内側で完結させることも、街区を歩いて外へ開くこともできる。垂直の街と横に広がるホテルの関係が、この立地の読みどころである。

こんな旅人に

  • 建築とインテリアの設計言語そのものを目当てに滞在したい人。デニストンとアマンの系譜に関心がある人。
  • 宿泊に加えて、スパとプール、食を一棟で完結させる都市ステイケーションを求める人。
  • 梅雨明けの都心で、観光に出ずに一軒へ深く沈み込む時間を持ちたい大人二人。
  • 一方で、価格を宿泊単体の対価として測る旅程や、幼い子ども連れの慌ただしい滞在には必ずしも噛み合わない。

具体情報

  • 所在: 東京都港区麻布台1-2-2 麻布台ヒルズ レジデンスA(1〜13階)
  • 最寄り駅: 東京メトロ日比谷線 神谷町駅から地下直結(六本木一丁目駅も徒歩圏)/羽田空港から車で約30分
  • 客室: 全122室、デラックス55㎡〜ジャヌスイート284㎡
  • ウェルネス: 約4,000㎡(都内最大級)、25mインドア温水プール、ジム、トリートメントルーム
  • 食: 炭火鮨〈スミ〉、イタリアン〈ジャヌ メルカート〉ほか、8つのダイニング&ソーシャル空間
  • 開業: 2024年3月13日(ブランド〈ジャヌ〉世界一号店)
  • 設計: デニストン設計事務所/ジャン=ミシェル・ギャシー

Media Picks Score

90 / 100 — 評価の内訳: 立地(麻布台ヒルズ直結の都心中枢)/設備(都内最大級のウェルネス棟)/体験(全室55㎡以上、抑えた密度)/価格感(高価格帯、参考価格 ¥221,000〜¥405,000)/編集適合度(デニストン設計の空白テーマ)。開業から日が浅いため公開レビューの集約は限定的で、本スコアは設計・設備・立地の編集評価に比重を置いた参考値である。

目安価格 ¥221,000〜¥405,000 / 泊 (2名1室・通常期)

よくある質問

Q. ジャヌ東京はアマンとどう違いますか?

A. ジャヌはアマンが初めて立ち上げた姉妹ブランドで、サンスクリット語で「魂」を意味します。静けさに徹する本家アマンに対し、館内に8つのダイニングとウェルネス棟を抱え、街の人も交わる社交性を持たせている点が最大の違いです。設計は同じデニストンが担っています。

Q. 客室はどのくらいの広さですか?

A. 全122室で、最も標準的なデラックスでも55㎡、最上位のジャヌスイートは284㎡です。都市ホテルとしては密度を抑えた造りで、東京タワーや麻布台の眺望を取り込む客室が多く用意されています。

Q. スパやプールは滞在の目玉になりますか?

A. なります。約4,000㎡と都内最大級のウェルネス棟に、25mのインドア温水プールとラウンジプール、広大なジム、トリートメントルームを備えます。宿泊と組み合わせて一棟で過ごす都市ステイケーションに向く構成です。

Q. アクセスは?

A. 東京メトロ日比谷線の神谷町駅から麻布台ヒルズへ地下で直結し、六本木一丁目駅も徒歩圏です。羽田空港から車で約30分、東京駅から15〜20分と、都心の要に位置します。

Q. 梅雨明けの都心滞在に向きますか?

A. 天候に左右されず館内で完結できる構成のため、梅雨明けの蒸す時期でも屋内プールやウェルネスを軸に静かに過ごせます。観光へ出ずに一軒へ沈み込む滞在を求める旅程に、編集部が推したい一軒です。

本記事の参考情報

Janu Tokyo 公式サイト — 客室・ウェルネス・ダイニングの一次情報
麻布台ヒルズ 公式サイト — 街区・アクセスの情報
Wikipedia: 麻布台ヒルズ — 街の成り立ちと地理の背景

編集部から

ジャヌ東京が示したのは、都市のラグジュアリーが「部屋の質」から「棟の体験」へと重心を移す方向だった。客室数を増やさず、その分をスパと食と余白に振り向ける。垂直に積み上がる麻布台ヒルズのなかで、横へ広がる骨格を通した判断は、これからの都心ホテルの一つの解として読める。開業の輪郭が街になじむにつれ、この一棟の評価はまた変わっていくだろう。次は、同じ港区の単館ラグジュアリーがそれぞれどこに余白を割いたのか、設計言語で比べて読んでみたい。あなたなら、部屋と棟、どちらの時間に対価を払うだろうか。