瀬戸内の海が穏やかになる晩春から初夏にかけて、高松を起点に直島・豊島を渡る二泊三日。安藤忠雄、SANAA、西沢立衛、谷口吉生といった戦後日本建築の主要な軌跡が、ひとつの瀬戸内航路の上に並ぶ稀有な旅程である。芸祭期の混雑を避け、常設の建築と美術館を主役にした、大人のための行程を編集部が組み立てた。

Day 宿 エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
Day1 ロイヤルパークホテル高松 高松市 92 73 ¥24–¥44k 寶田陵によるアールデコ和モダンの空間、SANAA 県立アリーナ徒歩圏
Day2 直島旅館 ろ霞 直島町 95 11 ¥147–¥256k 2022 年開業、本村集落徒歩圏の島内初本格旅館・全室露天付
Day3 MY LODGE naoshima 直島町 93 17 宮浦港側、瀬戸内海を望むライフスタイルホテル・現代美術コレクション展示

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)。MY LODGE naoshima は集計サンプルが不足のため非表示。

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旅程の組み立て

高松を 1 日目の起点に置き、フェリーで直島に渡って 2 泊目を島内で迎える。3 日目は直島宿で朝を過ごし、午前のフェリーで豊島へ。〈豊島美術館〉を鑑賞して家浦港から直接高松へ戻る、いわば「直島滞在型」の組み方。逆に直島・豊島側に 2 泊できる宿の選択肢が限られるため、本記事では Day3 の昼に豊島を訪れる構成を選んだ。フェリーは四国汽船の宇野—直島—豊島—小豆島ライン、晩春から初夏は瀬戸内海の波が最も穏やかで、欠航リスクが小さい時期である。

Day1. ロイヤルパークホテル高松 — 高松市

アールデコと和モダンを重ねた高松の中心宿。SANAA 県立アリーナと栗林公園を歩く一日の起点となる一軒。

Media Picks Score: 92 / 100  73 室、中規模シティホテル。

目安価格 ¥24,000–¥44,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ロイヤルパークホテル高松 — 香川県高松市・アールデコ調と和モダンを融合したシティホテル外観
PHOTO: ロイヤルパークホテル高松 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

インテリアデザイナー寶田陵による空間設計が特徴。NY アールデコの幾何文様に和モダンの素材感を重ね、機能性を保ったコンパクトラグジュアリーとしてまとめている。1989 年開業ながら客室のリニューアルが続いており、集約レビューでも安定した支持を示している。高松築港から徒歩圏、瓦町・栗林公園にも歩いて出られる立地で、谷口吉生〈高松クレメントイン〉や SANAA 設計の〈あなぶきアリーナ香川〉(2025 年竣工) を初日の散策動線に組める。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、ロビーと共用部の設えに対する肯定的評価が一貫して高く、客室の清潔感も平均を上回る。一方で建物全体としては築年が古いことに起因する経年が指摘される傾向もあり、最新の高層タワー型を期待する層には合いにくい。朝食の評価は中位安定で、突出した「料理目的」の宿ではないと言える。出張慣れした旅行者からの再訪率が高いタイプの宿である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    美術館・建築を歩く高松初日の拠点を探す旅行者、デザイン要素のある客室で過ごしたい大人 2 人、瀬戸芸の合間に常設建築だけを集中して見たい層
  • 向かない:
    最新の高層シティホテルや天然温泉を最優先する人、子連れで広い客室を求める家族(基本は 2 名利用の中サイズ)

具体情報

  • 最寄り駅: JR高松駅から徒歩約 12 分(タクシー 5 分)、ことでん片原町駅から徒歩 3 分
  • 客室数: 73 室、シングル〜スイートの構成
  • 開業: 1989 年、客室リニューアル継続中
  • 立地: 中央通り沿い、サンポート高松・SANAA 設計の県立アリーナ徒歩圏
  • 食事: 朝食ビュッフェ、館内レストラン併設


Day1 → Day2 の移動

高松築港から四国汽船のフェリーで直島・宮浦港へ約 50 分 (1 日 5 本前後)。直島島内の本村集落へは町営バスで 10 分、宮浦から徒歩でも 20 分強の距離。〈直島旅館 ろ霞〉は本村の路地に位置し、〈ANDO MUSEUM〉(安藤忠雄、2013) と〈家プロジェクト〉が徒歩圏。チェックイン後、夕方の本村散策に充てる組み立てが時間配分として整いやすい。

Day2. 直島旅館 ろ霞 — 直島町・本村

2022 年開業、十一室の島内初の本格旅館。全室露天付スイートと本村集落の路地が一日の余韻を受け止める。

Media Picks Score: 95 / 100  11 室、小規模旅館。

目安価格 ¥147,000–¥256,000 / 泊 (2名1室・通常期)


直島旅館 ろ霞 — 直島町本村・全室露天風呂付スイートを備えた島内初の本格旅館
PHOTO: 直島旅館 ろ霞 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

2022 年 4 月、ARCHITAINMENT による設計で開業した「直島初の本格旅館」。本村集落の風景と素材感を引き継ぎ、土壁と木と石でまとめた数寄屋系のしつらえに、全室露天風呂付きスイートというラグジュアリー仕様を組み合わせている。十一室という規模は、〈家プロジェクト〉や〈ANDO MUSEUM〉が徒歩圏の本村集落と矛盾しない密度。地中美術館・李禹煥美術館を一日歩いた後の身体を、湯と食でリセットする宿として推したい一軒である。

集約レビューの傾向

集約評価は 4.7 と高水準で、特に客室空間の作り込み、食事の地場食材使い、運営の丁寧さに対する肯定が並ぶ。一方で価格帯は確実に高く、本村集落という立地ゆえに敷地そのものは限られる旨の指摘も見える。地中・李禹煥両美術館の鑑賞後に島で湯と料理に時間を使いたい層、芸祭期を外して常設だけを訪れる旅行者からの支持が中心である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    安藤忠雄の地中美術館・李禹煥美術館を島で 1 日かけて鑑賞する人、記念日に島宿でハイエンドの料理と湯を求める大人 2 人、和の様式を体験したい海外からの旅行者
  • 向かない:
    コスト面で気軽に試したい層 (1 泊 15 万円〜)、夜の街遊びを期待する人 (本村集落は静かに沈む)、車での頻繁な出入りを想定する旅程

具体情報

  • 最寄り港: 直島・宮浦港から町営バスで本村まで約 10 分、徒歩 20 分強
  • 客室数: 11 室、全室露天風呂付スイート構成
  • 開業: 2022 年 4 月(ARCHITAINMENT 設計)
  • 立地: 直島本村集落、ANDO MUSEUM・家プロジェクト徒歩圏
  • 食事: 朝食・夕食ともに地場食材を用いた会席


Day2 → Day3 の選択肢

直島で 2 泊するか、宮浦港側に宿替えするかは旅程の温度感で選ぶ。〈ろ霞〉に連泊するなら 3 日目朝に豊島へ渡るのが最短。一方、価格帯を抑えて 2 泊目の宿を切り替えたい場合は、宮浦港すぐの〈MY LODGE naoshima〉が選択肢になる。瀬戸内海と四国の山並みを望むテラスを持つ部屋が南向きに並び、宿そのものに時間を割きたい滞在型の旅程と相性が良い。

Day3. MY LODGE naoshima — 直島町・宮浦

瀬戸内海を望む宮浦のライフスタイルホテル。木と布と現代美術が同居する 17 室、豊島へのフェリー始発に最も近い宿。

Media Picks Score: 93 / 100  17 室、小規模デザインホテル。

目安価格 公開販売価格の集計サンプル不足のため非表示


MY LODGE naoshima — 直島町宮浦・瀬戸内海を望むテラス付き客室を備えたライフスタイルホテル
PHOTO: MY LODGE naoshima — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

無垢材の家具、ナチュラルファブリック、テーブルウェア、テキスタイルを揃えた 17 室のライフスタイルホテル。客室には香港在住のイラストレーター Fujishima Tsutomu の作品や、写真家 Jeremy Benkemoun のプリントが滞在体験の一部として配されている。南向きテラスからは瀬戸内海と四国山地、西の窓からは宮浦港が見える方角性のある建築で、館内レストラン〈Luke’s Table〉の朝食 (7:45–9:15、要前日予約) は予約客限定の落ち着いた構成。宮浦港まで徒歩圏のため、3 日目の豊島行きフェリーへの導線が最も短い。

集約レビューの傾向

集約評価は 4.4 で、2020 年代の新興デザインホテル系として安定した支持を集めている。海側テラス付き客室の眺望、家具とアートの選定、運営の柔らかさへの肯定が中心。一方で、本村集落の伝統的な家屋空間を期待する層には方向性が異なる旨の指摘も見え、現代的なライフスタイル系のリゾート寄り宿として捉えるのが適切である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    フェリー始発に最短で乗りたい 3 日目の宿として、現代美術や生活道具の選定に関心がある旅行者、ヴィラ系のライフスタイル滞在を好む大人 2 人
  • 向かない:
    本村集落の路地と木造旅館を求める層、和会席を必ず食べたい人、朝食を自由な時間に取りたい旅行者(要前日予約・時間帯固定)

具体情報

  • 最寄り港: 直島・宮浦港から徒歩圏
  • 客室数: 17 室、テラス付き客室含む
  • 開業: 2020 年 4 月
  • 食事: 館内レストラン〈Luke’s Table〉、朝食は 7:45–9:15、前日予約必須
  • 客室特徴: 無垢材家具、現代美術プリント、南向きテラス付タイプあり


Day3 の最終地・豊島美術館

直島・宮浦港から豊島・家浦港へは四国汽船のフェリーで約 22 分。家浦港から〈豊島美術館〉までは島内シャトルバスで 15 分前後。〈豊島美術館〉(2010 年、建築家・西沢立衛/アーティスト・内藤礼) は、屋根の二か所に開いた楕円形の開口部のみから自然光が落ちる白いコンクリートシェルで、床から湧き出る「水滴」のインスタレーション《母型》が常設されている。鑑賞所要は最低 60 分。家浦港 → 高松港のフェリーは 35 分前後で、夕方には高松に戻れる。本旅程はこの〈豊島美術館〉を最終地に置くことで、戦後日本建築の系譜 (安藤 → SANAA → 西沢) を時系列で辿る構成になる。

よくある質問

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 編集部が推すのは晩春から初夏、具体的には 5 月中旬〜6 月上旬。瀬戸内海の波が最も穏やかでフェリー欠航リスクが低く、観光客の繁忙ピークも外せる。芸祭期 (3 年に 1 度) は混雑と価格高騰のため、常設建築だけを狙うなら閉幕後が望ましい。

Q. 直島・豊島の入館予約は必要ですか?

A. 〈豊島美術館〉と〈地中美術館〉は事前のオンライン予約制 (時間指定) が基本で、当日券は枠が残った場合のみ。〈李禹煥美術館〉〈ANDO MUSEUM〉〈家プロジェクト〉は予約不要だが、施設ごとに休館日が異なるため、訪問曜日を事前に確認することが必要となる。

Q. 車で回れますか?

A. 直島・豊島ともにフェリーへの車載は可能だが、島内駐車場が限られるため、レンタサイクル + 町営バスの組み合わせが現実的。本記事の宿はいずれも駅/港から徒歩圏で、車を持たない旅程を前提に組んでいる。

Q. 1 泊 2 日に短縮できますか?

A. 短縮は可能だが、豊島〈豊島美術館〉と直島の主要館を 1 日で回すのは時間的に厳しい。短縮するなら豊島を切るのではなく Day1 の高松散策を簡略化する判断が良い。〈豊島美術館〉は本旅程の終着点として外せない。

Q. インバウンド客の利用は?

A. 直島・豊島は欧米のアートツーリストの定番ルートで、〈ろ霞〉は外国人比率が高め、〈MY LODGE naoshima〉も英語対応が安定している。本村集落と地中美術館は英語の解説資料が用意されており、和の様式を体験したい海外からの旅行者の旅程に組み込みやすい。

本記事の参考情報

ベネッセアートサイト直島 公式 — 直島・豊島の美術館・アート情報の一次ソース
うどん県旅ネット (香川県観光協会公式) — 高松市内・離島アクセスの公式情報
四国汽船 — 高松・宇野・直島・豊島・小豆島フェリー時刻表

編集部から

本記事の三軒に通底するのは「現代建築・現代美術を主役にした旅程」と矛盾しない宿の選定軸である。芸祭期の祝祭を経た後の、常設の作品群が静かに戻ってくる時期に、海と建築をゆっくり渡る。豊島は宿の選択肢が極端に少なく、直島と高松を起点にせざるを得ない地理的制約はあるが、それゆえに「フェリーを移動の主軸に置く旅程」という瀬戸内固有の旅の形式が立ち上がる。次は同じく西沢立衛の手による別の作品群、あるいは安藤忠雄の他の海辺の建築 (本州・四国・九州) を辿る一本を編んでもいいだろう。

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