瀬戸内国際芸術祭の会期に依存せず、安藤忠雄と西沢立衛の常設建築を軸に高松―直島―豊島を歩く 2 泊 3 日の旅程を、編集部が再構成した。芸術祭年の喧騒を避け、設計者の意図と素材の手触りをそのまま受け取れる時期に組み立てている。宿は移動コストを最小化するため高松市内に 2 泊を固定し、フェリー時刻と歩行距離を行程表に明記した。建築竣工年と各館の閉館時刻まで踏まえた、いわば常設芸術祭のための実用旅程である。
| Day | 宿 | エリア | 客室 | 目安価格 | 行程の主役 |
|---|---|---|---|---|---|
| Day1 | fav 高松 | 93 | 41 | 各公式で確認 | 香川県立ミュージアム+玉藻公園・北浜界隈を歩く |
| Day2 | ロイヤルパークホテル高松 | 92 | 73 | 各公式で確認 | 直島で安藤忠雄 3 作品 (地中・李禹煥・ANDO MUSEUM) |
| Day3 | ドーミーイン高松中央公園前 | 高松・中央公園 | 123 | 各公式で確認 | 豊島美術館 (西沢立衛) — 内藤礼の常設インスタレーション |
※ 料金は日付・プランで変動するため、各宿の公式サイトで確認してください。
Day 1 — 高松市内:県立ミュージアムと城下の街歩き
JR高松駅前のサンポート周辺を起点に、香川県立ミュージアムと玉藻公園を中心に半日で巡る初日。
行程表 (Day 1)
- 11:00 JR高松駅着 → サンポート高松へ徒歩 5 分(約 400m)
- 11:30–13:00 香川県立ミュージアム(1999年開館・2008年再編)
- 13:30–14:30 玉藻公園(高松城址)— 海水を引き込む内堀の石組み、披雲閣(1917 年)
- 15:00–17:30 北浜 alley・丸亀町商店街(再開発による現代的アーケード)— 屋根架構と街路スケール
- 17:30 宿チェックイン (fav 高松)、徒歩 5 分
- 歩行距離計 約 4.8 km(うちアーケード半分)
fav 高松 — 高松市塩上町
ことでん瓦町駅に近い高松市塩上町の 41 室のライフスタイル系ホテル。2025 年 3 月に全館リニューアルを終え、街に開かれたロビーを持つ。
41室、ライフスタイル系プレミアム小規模。

なぜ選ばれるか
建築巡礼の起点としての立地が抜きん出ている。ことでん瓦町駅から徒歩 5 分。2025 年の全館リニューアルで 1 階にカフェ JUNE COFFEE(7:00–17:00)を迎え、ファサードにもトレーラーハウスのカフェを置いて、街と宿の境界をあえてぼかしている。客室は和モダンの「ジャパニーズモダン」、欧州寝具の「クイーン/キング」など 7 タイプ。改装設計は Akiti architects による。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、評価は 5 点満点で 4.0〜4.5 の帯、件数は 1,000 件以上。客室の広さに触れた口コミが 30〜40%、清潔感とランドリーがそれぞれ 20〜30% で、いずれも好意的な言及が中心。
向く人 / 向かない人
-
向く:
建築・アート目的の 2 泊以上の滞在、宿を観光ハブとして使う旅程、商店街の食を楽しみたい人 -
向かない:
温泉大浴場を求める人
具体情報
- 最寄り駅: ことでん瓦町駅から徒歩 5 分 / JR栗林駅から徒歩 15 分
- 客室サイズ: 20〜45 ㎡(7 タイプ)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 食事: 1 階 JUNE COFFEE(7:00–17:00、モーニング 7:00–10:00)。公式によると朝食サービスは 10/31 で終了し、11 月中旬に新レストランを開業予定
- 開業 / リニューアル: 2020 年 11 月開業、2025 年 3 月全館リニューアル
- 1 階カフェ: 25 席(うちテラス 10 席)
Day 2 — 直島:安藤忠雄 3 作品を 1 日で
高松港からフェリー 50–60 分。地中美術館・李禹煥美術館・ANDO MUSEUM の常設安藤 3 作品を、本村と美術館エリアを行き来しながら巡る。
行程表 (Day 2)
- 朝 高松港発 フェリー → 直島宮浦港 約 50 分(高速旅客船なら約 30 分。発着時刻は四国汽船の時刻表で確認)
- 着後 宮浦港 → 町営バスで「つつじ荘」終点 約 15 分
- 09:15 つつじ荘から場内シャトルで美術館エリア(徒歩なら 25 分・上り)
- 10:00–12:00 地中美術館(安藤忠雄、2004 年竣工)— 半地下構造、モネ「睡蓮」5 点、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリア。事前予約制
- 12:00–12:45 海岸沿いを徒歩約 600m、ベネッセハウス周辺を通過(敷地外周のみ)
- 13:00–14:30 李禹煥美術館(安藤忠雄、2010 年竣工)— 谷地形に半埋設、無人空間と石・鉄板のインスタレーション
- 14:45 バスで本村地区へ移動 約 10 分
- 15:00–16:00 ANDO MUSEUM(安藤忠雄、2013 年竣工)— 築 100 年の木造民家の中にコンクリートを挿入
- 16:00–17:00 家プロジェクト 7 軒のうち時間で 2–3 軒選択(南寺・角屋・きんざ 等)
- 夕方 宮浦港発 → 高松港 フェリー約 60 分(最終フェリー 17:00 発、以降は高速旅客船。時刻は四国汽船で確認)
- 歩行距離計 約 5.5 km(うち上り坂約 1 km)
ロイヤルパークホテル高松 — 高松市瓦町
ことでん瓦町駅から徒歩 5 分。全室クラブフロア仕様の 73 室で、フェリー往復日にちょうどよい中間規模。
73室、街中プレミアム中規模。

なぜ選ばれるか
ことでん瓦町駅徒歩 5 分、高松築港駅まで電車約 5 分という動線が直島往復日の利点になる。2016 年 8 月 25 日に全室クラブフロア化リニューアルを完了し、内装は寶田陵氏が担当。直島から戻った夕方、シンボルタワー周辺で食事を取りたい旅程に合致する。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、評価は 5 点満点で 4.0〜4.5 の帯、件数は 1,000 件以上。クラブラウンジに触れた口コミが 40〜50%、料理の味が 20〜30%、スタッフの対応が 10〜20% で、いずれも好意的な言及が中心。一方、建物自体は 1989 年開業の躯体を踏襲しているため、施設の新しさを求める層には響きにくい傾向が見て取れる。レイアウトはダブル中心で家族 4 名 1 室は実質困難。
向く人 / 向かない人
-
向く:
フェリー利用で島と街を行き来する旅程、瓦町・サンポート両エリアを使う夜、ビジネス+建築観光の折衷 -
向かない:
最新設備重視層、子連れで広いコネクティングを必要とする旅、デザイン主導の宿泊体験を主目的とする人
具体情報
- 最寄り駅: ことでん瓦町駅から徒歩 5 分 / JR高松駅からタクシー約 10 分
- サンポート高松まで: ことでん瓦町→高松築港 約 5 分、またはタクシー(直島行フェリーターミナル)
- 客室サイズ:
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 朝食はクラブラウンジ、レストランは日本料理 錦
- 開業 / リニューアル: 1989 年開業、2016 年全室クラブフロア改装
Day 3 — 豊島:西沢立衛と内藤礼の常設
高松港から豊島家浦港へ高速船約 35 分。西沢立衛設計の豊島美術館(2010 年)は、空間そのものが内藤礼の作品「母型」を内包する。
行程表 (Day 3)
- 08:00 朝食 → 高松港へ(瓦町からことでんで高松築港まで約 5 分、またはタクシー)
- 朝 高松港発 高速船 → 豊島家浦港 約 35 分(直行便。運航日・時刻は豊島フェリーの時刻表で確認)
- 着後 家浦港 → レンタサイクル(電動推奨)または豊島シャトルバスで唐櫃岡へ 約 15 分(約 6 km、起伏あり)
- 09:45–11:30 豊島美術館(西沢立衛+内藤礼、2010 年竣工)— 水滴型のシェル構造、無柱の有機的空間に水の作品「母型」が常設展示される
- 11:45–12:30 豊島美術館に隣接するカフェまたは唐櫃岡集落で郷土料理
- 13:00–14:00 心臓音のアーカイブ(ボルタンスキー、2010 年常設)— 美術館から自転車で 8 分
- 14:15 家浦港へ戻る
- 午後 家浦港発 → 高松港 直行便約 35 分(時刻は豊島フェリーで確認)
- 歩行距離計 約 2.5 km(自転車含めて移動 12 km)
天然温泉 玉藻の湯 ドーミーイン高松中央公園前 — 高松市天神前
フェリー往復で疲れた 3 日目に、最上階 11 階の天然温泉で締めくくる。瓦町駅徒歩 5 分、123 室の中規模温泉付きホテル。
123室、温泉付き街中ホテル。

なぜ選ばれるか
11 階に男女別の天然温泉「玉藻の湯」を備える。露天風呂・水風呂・高温サウナ(男性側)/ナノスチームサウナ(女性側)の構成で、入浴可能時間は 15:00〜翌 10:00。豊島往復で身体に蓄積した移動疲労を物理的に解消できる施設は、市内中規模ホテル群では希少。ロケーションは中央公園・瓦町・玉藻公園のいずれにも徒歩圏で、最終日の夕食・出発前の街歩きにも使い勝手が良い。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、評価は 5 点満点で 4.0〜4.5 の帯、件数は 1,000 件以上。温泉と料理の味に触れた口コミがそれぞれ 20〜30% で、いずれも好意的な言及が中心。客室はビジネスホテルとして標準的なサイズで、デザイン主導の体験を期待する層には響きにくい一方、機能性とアメニティの密度では同価格帯で上位に位置する。
向く人 / 向かない人
-
向く:
フェリー利用で身体疲労が溜まる旅程、最後の夜に温泉で締める志向、玉藻公園・中央公園周辺を歩く人 -
向かない:
デザインホテル志向、広めの客室や独自インテリアを優先する人、夕食付プラン主体で宿を選ぶ層
具体情報
- 最寄り駅: ことでん瓦町駅から徒歩 5 分 / JR高松駅から車で約 5 分
- 温泉: 11 階 天然温泉「玉藻の湯」 15:00〜翌 10:00(露天・水風呂・サウナあり)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 朝食ビュッフェ(讃岐うどん等地物)、夜鳴きそば 21:30〜23:00 無料
- 開業: 2018 年 7 月
よくある質問
Q. 芸祭期と非芸祭期、どちらが建築鑑賞に向きますか?
A. 常設の安藤忠雄・西沢立衛建築を主目的とするなら、芸祭非開催年または会期外を編集部が推す。地中美術館・豊島美術館とも入館定員が緩和され、撮影や鑑賞時間に余裕が生まれる。芸祭期は会期パスポートと臨時作品の存在価値があるが、建築そのものとの一対一の対峙には混雑が干渉する。
Q. 高松ではなく直島・豊島の宿に泊まる選択肢は?
A. 直島・豊島側の宿は客室数が極めて少なく(本記事ではベネッセハウスを宿として推さない)、家族規模 4 名以上だと選択肢が一棟貸し系に限られる。2 泊 3 日で 3 島を巡る場合、高松連泊+日帰り往復の方が荷物移動・チェックイン回数の負担が少ない。1 名・2 名で島内泊にこだわるなら、直島本村の小規模旅館(10 室前後)や豊島家浦の一棟貸しを検討する。
Q. フェリーは予約必要ですか?
A. 高松―直島・豊島間は四国汽船と豊島フェリーが運航。乗用車を載せない徒歩客は基本予約不要だが、芸祭期や週末は始発・最終便が混雑する。地中美術館は事前予約制(公式サイトで日時指定)なので、フェリー時刻と予約時刻の整合は必須。
Q. ベネッセハウスに泊まれませんか?
A. 物理的には可能だが、本旅程の編集判断としては選定外とする。理由は、ベネッセハウスは敷地内宿泊者専用エリアを持つ「島の体験を完結させる宿」であり、安藤忠雄 3 作品+西沢立衛+高松の街を平等に巡る本記事の主題と性格が異なるため。ベネッセハウスを主役にした旅程は別記事として扱うのが妥当である。
Q. 雨天時の代替プランは?
A. 地中美術館・豊島美術館とも一定以上の降水で開館制限が入る場合がある(特に豊島美術館は床面の水滴作品の関係上、強風雨で休館の可能性)。雨天時の差し替えとして、高松市内の香川県立ミュージアム・四国村ミウゼアム・栗林公園商工奨励館(1899 年築)への内陸シフトが現実的である。
本記事の参考情報
・ベネッセアートサイト直島 公式 — 地中美術館・李禹煥美術館・ANDO MUSEUM の運営情報
・豊島美術館 公式 — 西沢立衛建築および内藤礼「母型」の常設情報
・香川県立ミュージアム — 高松市玉藻町の県立施設(1999 年開館の歴史博物館を 2008 年に再編)
・Wikipedia: 直島 — 地理・歴史的背景
編集部から
瀬戸内の常設建築は、芸術祭の波の合間に静かに見るのが本質に近いと考える。安藤忠雄が直島で 30 年かけて築いた半地下と水と光の構築言語、西沢立衛と内藤礼が豊島で達成した「建築と作品の不可分性」。これらを 3 日間で結ぶ旅は、移動と歩行と待ち時間の総和で初めて意味を持つ。次は冬の瀬戸内、または会期翌年の早春に同じ動線を歩いてみたい。あなたなら、この 3 日のどこに余白を増やしますか?