大分・竹田の長湯温泉を、湯屋の建築から読む旅に合う宿として、編集部が選んだ5軒を紹介する。芹川の谷に湧くのは、飲泉もできる高濃度の炭酸泉。谷の一角には、建築家・藤森照信が焼杉と漆喰の縞で組み上げたラムネ温泉館(日帰り施設)が立ち、この湯屋が土地の記憶を束ねている。炭酸泉は、湯温が高ければ泡は湯に溶け、ぬるければ銀色の泡が肌を覆う——その物理を、木造や茅葺、左官の構えがどう受けとめているか。夏の湯治を兼ねる層に向けて、泡の湯を建築として継ぐ宿を、地図とともに選んだ。

# 宿 エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1 長湯温泉 大丸旅館 竹田・長湯 93 15 ¥42–¥56k 藤森照信のラムネ温泉館を外湯に持つ大正創業の老舗
2 御宿 友喜美荘 竹田・長湯 92 7 ¥42–¥51k 木立に囲まれた自家源泉の一軒宿、美肌の湯
3 宿房 翡翠之庄 竹田・長湯 91 13 ¥65–¥80k 茅葺の母屋と意匠の異なる離れ、高濃度炭酸泉かけ流し
4 長湯温泉 かじか庵 竹田・長湯 86 9 ¥19–¥23k 芹川のほとり、底入れ底出しで湯の鮮度を保つ湯屋
5 長湯温泉 紅葉館 竹田・長湯 84 18 ¥14–¥28k 昭和7年の木造二階、名物ガニ湯を望む泡付きの湯

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

↕︎ 地図右下の角をドラッグすると高さを調整できます

1. 長湯温泉 大丸旅館 — 竹田・長湯

大正6年創業。谷に立つ藤森照信のラムネ温泉館を外湯に持つ、長湯の泡の湯を建築で束ねる一軒。

Media Picks Score: 93 / 100  15室、木造の老舗旅館。

目安価格 ¥42,000–¥56,000 / 泊 (2名1室・通常期)


長湯温泉 大丸旅館 — 竹田・長湯 · 1917年創業、藤森照信設計のラムネ温泉館を外湯に持つ老舗旅館
PHOTO: 長湯温泉 大丸旅館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

1917年(大正6年)創業の老舗で、長湯温泉の炭酸泉文化を語るとき、まず名の挙がる一軒である。2005年、旅館の外湯として建築家・藤森照信がラムネ温泉館を設計した。焼杉と漆喰の白黒の縞に、松の生えた望楼を載せた構えは、温泉建築の枠を越えて土地の風景そのものを組み替えた。宿泊者は32℃のぬる湯「ラムネ温泉」と42℃のにごり湯を外湯として使え、館内には自家源泉の内湯も引かれる。泉源・湯屋・宿が一本の線で結ばれている点で、この谷を読む起点に置きたい。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、外湯ラムネ温泉館へ歩いて通える立地と、ぬる湯に長く浸かる湯治的な過ごし方への評価が高い。銀色の泡が肌を覆う低温の炭酸泉は、この宿の体験の核として繰り返し言及される。一方、館そのものは意匠を競う現代宿ではなく、あくまで老舗の構えである点は、事前に把握しておきたい。飲泉と湯の効能を目的に据える層と、相性が良い。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 建築としての湯屋に関心がある旅、飲泉や湯治を兼ねる滞在、ぬる湯に長く浸かりたい人
  • 向かない: 客室の意匠や新しさを最優先する旅程、温泉街を歩かず宿内で完結させたい滞在

具体情報

  • 最寄り駅: JR豊後竹田駅からバス・車で約20分
  • 客室数: 15室(木造)
  • 湯: 自家源泉の内湯+外湯ラムネ温泉館(ぬる湯32℃/にごり湯42℃)
  • 外湯建築: ラムネ温泉館(2005年・藤森照信設計、焼杉と漆喰の縞)
  • 創業: 1917年(大正6年)


2. 御宿 友喜美荘 — 竹田・長湯

温泉街を離れ、木立に囲まれた7室の一軒宿。自家源泉の炭酸泉を「美肌の湯」として静かに引く。

Media Picks Score: 92 / 100  7室、木立の一軒宿。

目安価格 ¥42,000–¥51,000 / 泊 (2名1室・通常期)


御宿 友喜美荘 — 竹田・長湯 · 木立に囲まれた自家源泉の炭酸泉を持つ7室の一軒宿
PHOTO: 御宿 友喜美荘 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

長湯の中心からわずかに離れ、木々に囲まれて建つ7室の一軒宿である。特筆すべきは自家源泉を持つことで、かけ流しの炭酸泉を「美肌の湯」として引く。泉温がやや高いため、泡は肌に付くより湯に溶ける質のもので、大丸旅館のぬる湯とは対照的な性格を示す。同じ谷の炭酸泉でも、泉温と湯屋の造りで体験がこれほど変わる——その比較の一項として置きたい一軒。露天からは季節ごとの木立が眺められ、健康を意識した食も評価されている。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、静けさと、自家源泉ならではの湯の鮮度への支持が際立つ。客室数を絞った運営で、一人旅にも過ごしやすいという声の傾向が読み取れる。派手な意匠の宿ではなく、湯と食、そして木立の静寂を目的に据える滞在に合う。温泉街の賑わいや外湯めぐりの動線を求める向きには、やや物足りなさが残るかもしれない。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 静けさを優先する一人旅・二人旅、自家源泉の鮮度にこだわる人、湯と食で完結させたい滞在
  • 向かない: 温泉街の外湯めぐりを主目的にする旅、大浴場の規模を重視する人

具体情報

  • 最寄り駅: JR豊後竹田駅から車で約20分
  • 客室数: 7室(木立に囲まれた一軒宿)
  • 湯: 自家源泉かけ流しの炭酸水素塩泉(美肌の湯)、にごり湯露天
  • 泡の性格: 泉温が高く、泡は肌に付くより湯に溶ける
  • 食事: 健康を意識した会席


3. 宿房 翡翠之庄 — 竹田・長湯

茅葺の母屋を中心に、意匠の異なる離れを点在させる。高濃度炭酸泉を源泉100%かけ流しで引く13棟。

Media Picks Score: 91 / 100  13室、離れ主体の宿房。

目安価格 ¥65,000–¥80,000 / 泊 (2名1室・通常期)


宿房 翡翠之庄 — 竹田・長湯 · 茅葺の母屋と意匠の異なる離れ、高濃度炭酸泉を源泉かけ流し
PHOTO: 宿房 翡翠之庄 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

広い敷地に茅葺屋根の母屋を据え、露天付き・内湯付きなど意匠の異なる離れを点在させた宿房である。5軒のなかで建築的な密度は最も高く、棟ごとに素材と間取りを変える構成は、炭酸泉を「一棟ずつの湯屋」として体験させる装置になっている。湯は高濃度炭酸泉の源泉100%かけ流し。地産地消の創作料理とワインを供する運営も、竹田の食材を建築の内側に取り込む姿勢として一貫している。谷のなかで、最も設計意図の読みやすい一軒。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、離れの独立性と、源泉かけ流しの湯の質への評価が高い。棟ごとに趣が異なるため、滞在のたびに違う建築を選べる点が支持されている。一方で価格帯は5軒のなかで最も高く、記念の滞在や、建築そのものを目的とする旅に向く。気軽な湯治というより、意匠と静けさに対価を払う滞在として位置づけたい。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 記念日・カップル旅、離れの独立性を重んじる滞在、建築と食に対価を払う旅
  • 向かない: 予算を抑えた湯治、大浴場での湯めぐりを主目的にする旅程

具体情報

  • 最寄り駅: JR豊後竹田駅から車で約20分
  • 客室数: 13室(意匠の異なる離れ主体)
  • 建築: 茅葺の母屋+露天付き/内湯付きの離れが点在
  • 湯: 高濃度炭酸泉、源泉100%かけ流し
  • 食事: 地産地消の創作料理、ワイン


4. 長湯温泉 かじか庵 — 竹田・長湯

芹川のほとりに立ち、底入れ底出し方式で湯の鮮度を保つ湯屋。露天と岩盤浴を備えた9室の宿。

Media Picks Score: 86 / 100  9室、川沿いの旅館。

目安価格 ¥19,000–¥23,000 / 泊 (2名1室・通常期)


長湯温泉 かじか庵 — 竹田・長湯 · 芹川のほとり、底入れ底出し方式の湯屋と露天を持つ旅館
PHOTO: 長湯温泉 かじか庵 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

芹川のほとりに立つ川沿いの宿で、湯屋の設計思想が明快である。湯船の底から新鮮な湯を注ぐ「底入れ底出し方式」を採り、空気に触れて劣化する前の炭酸泉を体で受けとめる工夫が施されている。泉質は炭酸水素塩泉。露天と内湯に加え、長湯温泉で初となる麦飯石の岩盤浴・サウナを備え、家族湯もある。派手さより機能で組まれた湯屋であり、湯の鮮度を第一に据える設計は、この谷の炭酸泉を最も実直に扱う一軒と言える。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、湯の鮮度と、露天・岩盤浴・家族湯といった湯まわりの設備への評価が安定している。日帰り利用も受け入れる開かれた運営で、湯そのものを目的に据える層と相性が良い。目安価格も5軒のなかでは抑えめで、夏の湯治を気軽に組みたい旅程に向く。意匠を競う宿ではないため、建築の華やかさを求める向きには実務的に映るかもしれない。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 湯の鮮度を第一にする旅、岩盤浴や家族湯を使いたい滞在、予算を抑えた夏の湯治
  • 向かない: 客室や共用部の意匠を最優先する旅、静かな一軒宿の雰囲気を求める人

具体情報

  • 最寄り駅: JR豊後竹田駅から車で約20分(芹川のほとり)
  • 客室数: 9室
  • 湯: 炭酸水素塩泉、底入れ底出し方式の露天・内湯、家族湯
  • 設備: 長湯温泉初の麦飯石岩盤浴・サウナ(男湯)
  • 利用: 日帰り入浴・食事にも対応


5. 長湯温泉 紅葉館 — 竹田・長湯

昭和7年創業の木造二階建て。芹川の名物ガニ湯を望む古民家風の構えに、泡が肌を包む炭酸泉を引く。

Media Picks Score: 84 / 100  18室、木造二階の旅館。

目安価格 ¥14,000–¥28,000 / 泊 (2名1室・通常期)


長湯温泉 紅葉館 — 竹田・長湯 · 昭和7年創業の木造二階建て、芹川のガニ湯を望む古民家風旅館
PHOTO: 長湯温泉 紅葉館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

昭和7年(1932年)創業、芹川沿いに立つ木造二階建ての旅館である。古民家風の構えは、この谷の温泉建築のなかでも時代の層をよく残す一軒で、川床に湧く名物「ガニ湯」を望む立地にある。湯は日本一とも評される長湯の炭酸泉で、しばらく浸かると身体を泡が包む——泡付きを体感できる、大丸旅館のぬる湯と並ぶ数少ない宿のひとつ。川の幸を用いた料理も土地に根ざす。建築の古格と、泡の湯の体感を同時に得たい旅程に据えたい。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、木造の趣と、泡が付く炭酸泉の体感、そして芹川・ガニ湯を望む立地への評価が重なる。目安価格は5軒で最も手頃な帯にあり、湯と建築を素朴に味わう滞在に向く。歴史ある木造ゆえ、最新設備の快適さを最優先する向きとは相性を選ぶ。あくまで古格と湯を楽しむ一軒として捉えたい。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 泡付きの炭酸泉を体感したい人、木造建築の古格を好む旅、芹川沿いの散策を兼ねる滞在
  • 向かない: 最新設備の快適さを最優先する旅、広い客室や大浴場の規模を重視する人

具体情報

  • 最寄り駅: JR豊後竹田駅から車で約20分(芹川沿い)
  • 客室数: 18室(木造二階建て)
  • 建築: 昭和7年(1932年)創業、古民家風の木造二階
  • 湯: 長湯の高濃度炭酸泉、浸かると泡が肌を包む
  • 立地: 芹川の名物「ガニ湯」を望む


よくある質問

Q. 炭酸泉の「泡付き」はどの宿で体感できますか?

A. 炭酸泉は泉温が低いほど気泡が肌に付きやすく、高いほど泡は湯に溶けます。ぬる湯を持つ大丸旅館の外湯ラムネ温泉館(32℃)と、芹川沿いの紅葉館が、泡付きを体感しやすい代表格です。友喜美荘のように泉温が高い湯は、飲泉に近い濃度を体で受けとめる性格になります。

Q. ラムネ温泉館には泊まれますか?

A. ラムネ温泉館は藤森照信が設計した日帰りの外湯施設で、宿泊機能はありません。運営元である大丸旅館に泊まると外湯として利用でき、泉源・湯屋・宿を一続きで体験できます。

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 炭酸泉は湯治を兼ねた夏の滞在に合い、芹川の水音とともに過ごす季節として編集部が推す時期です。紅葉期は名の通り色づきが美しく、価格も動くため、静かな湯を求めるなら初夏から盛夏の平日が過ごしやすいと言えます。

Q. アクセスは?

A. 最寄りはJR豊後竹田駅で、長湯温泉へはバスまたは車で約20分。大分自動車道の湯布院ICからは車で約40分です。谷に宿が点在するため、湯屋めぐりを兼ねるなら車での移動が便利です。

Q. 一人旅でも利用できますか?

A. 客室数を絞った友喜美荘は一人旅にも過ごしやすい傾向があります。湯治文化の根づく土地柄で、飲泉や長湯を目的とする単独の滞在も受け入れられてきました。

本記事の参考情報

たけ旅(竹田市観光ツーリズム協会) — 竹田・長湯温泉の観光情報
大分県観光情報公式サイト — 温泉・エリアの背景
Wikipedia: 長湯温泉 — 炭酸泉の歴史・地理

編集部から

長湯の5軒に通底するのは、湯を「どう新鮮なまま身体へ届けるか」という一点である。藤森照信のラムネ温泉館はぬる湯に長く居るための箱を、翡翠之庄は棟ごとの離れを、かじか庵は底入れ底出しの湯屋を、それぞれ別の解法として提示する。泉温が泡付きを左右するという単純な物理を、木造や茅葺、左官の構えがどう受けとめているか——同じ谷の炭酸泉を、あえて建築の差として読むと、竹田の湯はもう一段解像度を上げて見えてくる。次は、どの泉温の湯に、どれだけの時間を預けたいだろうか。

次に読むなら