函館の西部地区、元町から末広町・豊川町・大手町までをひと続きの街区として歩く旅に合う宿として、編集部が5軒を選んだ。開港期の煉瓦倉庫と昭和初期の銀行建築、明治の土蔵、そして2019年の現代建築が、函館山の裾に敷かれた坂道の両側に層をなして残っている。元町末広町の一帯は重要伝統的建造物群保存地区に指定され、街区そのものが保存の対象である。夜景を見上げるための一泊ではなく、洋館街の質感と海峡の光を室内から確かめる連泊として、都市プレミアムの5軒を並べる。

# ホテル エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1 NIPPONIA HOTEL 函館 港町 豊川町 93 9 ¥79–¥119k 赤レンガ倉庫の躯体を室内に残した9室、iF DESIGN AWARD 受賞
2 HOTEL&SPA センチュリーマリーナ函館 大手町 91 317 ¥46–¥74k 14・15階の天空露天風呂が函館山と港を同一のフレームに収める
3 ヴィラ・コンコルディア リゾート&スパ 末広町・南部坂 90 10 ¥60–¥133k 44〜116㎡の全10室をスイート仕様に振り切った小規模ホテル
4 HakoBA 函館 by THE SHARE HOTELS 末広町・八幡坂下 88 58 ¥13–¥24k 1932年築の旧安田銀行函館支店を転用、共用部を街に開く
5 函館元町ホテル 大町 85 27 ¥19–¥27k 明治42年の土蔵を離れの客室に転じた、坂下の27室
↕︎ 地図右下の角をドラッグすると高さを調整できます

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

1. NIPPONIA HOTEL 函館 港町 — 函館市豊川町

明治期の赤レンガ倉庫を九室に改めた、伝統的建造物群保存地区のただ中の一軒。

Media Picks Score: 93 / 100  9室、赤レンガ倉庫転用の小規模ホテル。

目安価格 ¥79,000–¥119,000 / 泊 (2名1室・通常期)


NIPPONIA HOTEL 函館 港町 — 函館市豊川町 · 明治期の赤レンガ倉庫を改修した9室の外観、切妻の煉瓦妻壁
PHOTO: NIPPONIA HOTEL 函館 港町 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

建物そのものが客室の主景になっている宿である。かつて貿易用に使われた赤レンガ倉庫を修繕・改修し、九室だけを挿した。煉瓦の目地は塗り込めず、補修の跡や色の違いを室内にそのまま残している。選定の理由は三点。重要伝統的建造物群保存地区の内側という立地、35〜40平米以上・全室プライベートバス付という客室の余裕、そして2022年の iF DESIGN AWARD 受賞が示す設計の水準である。函館漁港の魚介を北欧の調理法に寄せて出すレストランを併設し、一夜を宿の内側で完結させられる。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価は建築と食の二点に集中する。煉瓦の内装と照明計画、港町のオーベルジュを掲げる夕食への言及が厚い。一方で九室という規模ゆえ、館内で過ごす選択肢は限られる。客室定員は1〜2名、こどもの添い寝は6歳まで、バリアフリーは非対応という条件も、滞在の形をあらかじめ絞り込む。数字が示すのは、宿そのものを目的地とする層と、街歩きの拠点を探す層とで評価が割れる構造である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    記念日の二人旅、建築と食を一夜で完結させたい旅、伝建地区を朝夕に歩きたい人
  • 向かない:
    幼児連れの家族(客室定員1〜2名・添い寝は6歳まで)、段差や動線に配慮が要る旅(バリアフリー非対応)、館内施設の多さを求める旅程

具体情報

  • 最寄り: 函館市電「十字街」電停から徒歩約4分(JR函館駅から市電約5分)
  • 空港から: 函館空港 → 帝産バス約35分「ベイエリア前」下車 → 徒歩約2分
  • 客室: 全9室 / 35〜40㎡以上 / 全室プライベートバス付 / 定員1〜2名
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 食事: 併設レストランで夕食・朝食(北海道産食材を用いたコース)
  • 受賞: 2022年 iF DESIGN AWARD(ドイツ)
  • 駐車場: 提携駐車場 1泊1台 1,000円(税込・予約不可)
NIPPONIA HOTEL 函館 港町 — 併設レストランの煉瓦壁と曲木椅子、補修跡を残した壁面
PHOTO: NIPPONIA HOTEL 函館 港町 — 公式サイトを見る →


2. HOTEL&SPA センチュリーマリーナ函館 — 函館市大手町

最上階に置いた露天の湯から、函館山と港をひとつのフレームに収める317室。

Media Picks Score: 91 / 100  317室、天然温泉を備えた大型シティホテル。

目安価格 ¥46,000–¥74,000 / 泊 (2名1室・通常期)


HOTEL&SPA センチュリーマリーナ函館 — 函館市大手町 · 15階の天空露天風呂から望む函館山と市街
PHOTO: HOTEL&SPA センチュリーマリーナ函館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

2019年5月開業。西部地区の東端、函館朝市に接する位置に建つ現代側の一軒である。掲げるコンセプトは「Private Cruising」で、ロビーの天井は乗り込む船の船底に見立てられている。14・15階に天然温泉の大浴場と露天の湯を置き、湯船の縁を視線の高さに合わせることで、函館山の稜線と港の水面が同一の視野に入る。13階のロイヤルフロアは全室スイートで、客室内にも天然温泉のビューバスを備える。2025年にはレジデンスフロアが増築され、47平米の客室と98平米のサウナ付きスイートが加わった。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、言及は浴場と朝食に厚く集まる。次いで寝具 — 全室に入るシモンズとの共同開発ベッドと、十種から選ぶ枕の運用が繰り返し評価される。一方、317室という規模ゆえ浴場と朝食会場は時間帯によって混み、静けさを最優先する滞在とは相性が分かれる。客室は20タイプに分かれており、どのフロアを取るかで体験が大きく変わる点も、評価の分散として読み取れる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    温泉と眺望を宿の中心に置きたい旅、朝市と西部地区を徒歩で往復する旅程、犬を伴う滞在(専用フロアあり)
  • 向かない:
    小規模宿の静けさを求める旅、歴史的建造物への滞在そのものを目的とする旅、混雑時間帯を避けにくい短い滞在

具体情報

  • 最寄り: JR函館駅から徒歩5分 / 函館朝市から徒歩2分 / 金森赤レンガ倉庫から徒歩10分
  • 客室: 全317室・20タイプ / 20.5〜98㎡(ロイヤルスイート87.2㎡、マリーナサウナスイート98㎡)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 浴場: 14・15階に天然温泉大浴場と露天風呂。13階の全客室に天然温泉ビューバス
  • 開業 / 増築: 2019年5月開業、2025年にレジデンスフロア増築
  • 駐車場: 敷地内113台・1泊1台 1,000円(税込・10:00〜翌14:00)。電気自動車の充電スペースはなし
HOTEL&SPA センチュリーマリーナ函館 — ロビーラウンジ、船底に見立てた曲面天井と水盤
PHOTO: HOTEL&SPA センチュリーマリーナ函館 — 公式サイトを見る →


3. ヴィラ・コンコルディア リゾート&スパ — 函館市末広町

南部坂の中腹、全10室すべてをスイート仕様に振り切った小規模ホテル。

Media Picks Score: 90 / 100  10室、全室スイート仕様の小規模ホテル。

目安価格 ¥60,000–¥133,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ヴィラ・コンコルディア リゾート&スパ — 函館市末広町 · 客室リビング、暖炉と革張りのラウンジチェア
PHOTO: ヴィラ・コンコルディア リゾート&スパ — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

末広町の南部坂に建つ、一日十室限定の宿である。客室は五タイプで、最小のダブルが44平米、ジュニアスイートのツインが55平米、コーナーツインが64平米、そして116平米のプレジデンシャルスイートまで開く。日本の都市部でこの面積帯を十室だけ運用する例は多くない。家具は北欧の意匠でまとめられ、ベッドはシモンズ製。元町の教会群まで徒歩3分、金森倉庫のあるベイエリアまで同じく徒歩3分という、坂の上下どちらへも数分で出られる位置にある。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、客室の広さと室内の静けさが評価の中心を占める。スパは完全予約制で、同時刻に二名を受け入れられない日があるという運用条件も、集約された感想の中で繰り返し触れられる論点である。一方、十室という規模に対して館内の共用施設は限られ、食事や過ごし方の選択肢を宿の外に求める前提になる。駐車場は無料だが未舗装で、雨天や夜間の足元に注意が要る点も、実務的な指摘として現れる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    客室の面積を最優先する二人旅、元町とベイエリアの双方を徒歩で往復する旅程、スパを組み込んだ連泊
  • 向かない:
    館内で完結する滞在を望む旅、大浴場を条件とする旅、雨天に舗装された駐車動線を必要とする車移動

具体情報

  • 最寄り: 函館市電「十字街」電停から徒歩約3分(JR函館駅からタクシー約5分)
  • 空港から: 函館空港から車で約20分
  • 客室: 全10室・5タイプ / 44㎡(ダブル)〜116㎡(プレジデンシャルスイート)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00(延長不可)
  • 周辺: 元町の教会群まで徒歩3分、ベイエリア(金森倉庫周辺)まで徒歩3分
  • スパ: 完全予約制(電話・メール)
  • 駐車場: 無料・先着順(未舗装)


4. HakoBA 函館 by THE SHARE HOTELS — 函館市末広町

1932年の安田銀行函館支店を、八幡坂のふもとで宿に転じた一軒。

Media Picks Score: 88 / 100  58室(9タイプ)、銀行建築転用のデザインホテル。

目安価格 ¥13,000–¥24,000 / 泊 (2名1室・通常期)


HakoBA 函館 by THE SHARE HOTELS — 函館市末広町 · 1932年築の旧安田銀行函館支店、丸みを帯びた隅部の外観
PHOTO: HakoBA 函館 by THE SHARE HOTELS — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

函館港を臨み、函館山を背にした八幡坂のふもと。1932年、この地に近代建築「安田銀行函館支店」が建った。のちに富士銀行、さらに「HOTEL NEW HAKODATE」と名を変え、2017年5月に隣接する旧美術館の建物とあわせて現在の宿になっている。隅部を丸くおさめた優雅なフォルムと、簡素にまとめた外壁の装飾。銀行建築特有の重い外観を、正面の街路からそのまま見上げられる。旧銀行棟の20室はプライベートバス付で、天井高と窓の位置に当時の躯体が残る。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、建築と共用部への言及が突出する。ロビーラウンジ、蔵書を並べたブックラウンジ、シェアキッチン、ルーフトップテラス — 客室以外に滞在の場所が多く用意されていることが、評価の主軸を形成している。一方で、隣棟には共用のシャワー・トイレを用いる客室とドミトリーが含まれ、どの部屋を取るかで体験が大きく分岐する。価格帯の幅が広いのはこの構造によるもので、静粛性を最優先する層とは相性が割れる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    建築そのものを目的にする旅、共用部で過ごす時間を厭わない一人旅、坂の上下を頻繁に往復する街歩き
  • 向かない:
    全室個室バスを前提とする旅(棟により共用)、静けさを最優先する滞在(共用部が地域に開かれている)、記念日の設えを宿に求める旅

具体情報

  • 最寄り: 函館市電「末広町」電停からすぐ(住所:函館市末広町23-9)
  • 客室: 全58室・9タイプ。旧銀行棟はメゾネットのジュニアスイート61㎡×1室、モデレートツイン23㎡×13室、スタンダードダブル20㎡×3室、同コンパクト18㎡×3室
  • 建物: 1932年築(旧安田銀行函館支店)を改修、2017年5月開業
  • 食事: 朝食 7:00〜9:30。1階レストランバーは11:30〜14:30 / 17:30〜21:00(スープカレー)
  • 共用部: ロビーラウンジ、ブックラウンジ、シェアキッチン、ルーフトップテラス
  • 言語: 公式サイトは日本語・英語・繁体字・簡体字・韓国語の5言語


5. 函館元町ホテル — 函館市大町

明治42年の土蔵を離れの客室に転じた、大町の坂下に建つ27室。

Media Picks Score: 85 / 100  27室+土蔵の離れ、鉄筋3階建て。

目安価格 ¥19,000–¥27,000 / 泊 (2名1室・通常期)


函館元町ホテル — 函館市大町 · 土蔵造りの離れと本館、丸いステンドグラス窓の夜景
PHOTO: 函館元町ホテル — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

五軒のうち最も西、元町の坂を上がる手前の大町に建つ。構成は鉄筋三階の本館と、土蔵造りの蔵。この蔵が選定の理由である。明治42年築、旧桂久蔵邸の蔵を改修した離れの客室で、函館市の景観形成指定建築物等に指定されている。天井は総ひのき、壁面には丸いステンドグラスの窓が入る。桂久蔵はオホーツクから千島・樺太までを舞台にした漁業家であったと伝えられ、蔵の規模はその商いの大きさを示す。三階には函館湾を見下ろす展望風呂が置かれている。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価は立地と蔵の客室に集中する。市電の大町電停から徒歩二分、元町の教会群と旧函館区公会堂へは坂を一本上がるだけという位置が繰り返し評価される。一方、本館の客室は面積・設備ともに標準的で、蔵の離れとの差は小さくない。朝食は予約制で、館内のレストランは営業時間の変動がある。設えの体験を求めるなら蔵、拠点としての実用を求めるなら本館という、明確な二層構造で読むべき宿である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    元町の坂を朝夕に歩く旅程、蔵の離れを目的に取る一泊、車で西部地区に入る旅(駐車16台)
  • 向かない:
    本館客室に上質な設えを期待する滞在、館内での食事を旅の中心に置く旅程、大浴場の規模を条件とする旅

具体情報

  • 最寄り: 函館市電「大町」電停から徒歩2分 / JR函館駅から車で7分 / 函館空港から車で20分
  • 客室: 本館 全27室(ツイン・トリプル25室、ファミリー1室、コンドミニアム1室)+土蔵の離れ「屯所の庵」(1階和室・2階洋室、定員4名まで)
  • 蔵の築年: 明治42年(1909年)。旧桂久蔵邸の蔵を改修、函館市の景観形成指定建築物等
  • 浴場: 3階に展望風呂「屯所の湯」(黒鉛珪石=ブラックシリカ鉱泉、2011年開設)
  • 食事: 朝食 7:30〜9:30・予約制 1,200円(前日15:00まで)。館内レストランは2階30席
  • 駐車場: 16台


よくある質問

Q. 5軒はどの範囲に収まりますか?

A. 最も西の函館元町ホテル(大町)から最も東のセンチュリーマリーナ函館(大手町)まで、直線でおよそ1.3km。市電と徒歩で一日のうちに巡れる範囲に収まる。

Q. 晩秋に訪れる理由は?

A. 空気が澄んで坂上から見る港の輪郭が明瞭になり、日没が早いぶん、明るいうちに歩いて暗くなってから宿に戻る配分が取りやすい。ただし11月から3月は元町・ベイエリア周遊バスの一部停留所が使えなくなるため、市電を前提に動線を組む。

Q. 価格帯の幅はなぜ大きいのですか?

A. 9室の倉庫再生宿、10室の全室スイート、58室の銀行建築転用、317室の大型ホテルが同じ街区に同居しているため。1泊2名1室で ¥13,000 台から ¥130,000 台まで開く。

Q. 建築を目的に選ぶなら、どの順に見るとよいですか?

A. 明治期の赤レンガ倉庫(NIPPONIA HOTEL 函館 港町)、明治42年の土蔵(函館元町ホテル)、1932年の銀行建築(HakoBA 函館)、2019年の現代建築(センチュリーマリーナ函館)の順に見ると、開港期から現在までの層が時系列で読める。

Q. 海外からの旅行者にも向きますか?

A. HakoBA 函館は公式サイトが日本語・英語・繁体字・簡体字・韓国語の5言語に対応し、NIPPONIA HOTEL 函館 港町も英語版を持つ。5軒はいずれも市電の沿線にあり、一日乗車券で移動が完結する。

本記事の参考情報

はこぶら(函館市公式観光情報) — 西部地区の施設・イベント情報
函館・みなみ北海道観光ガイド — 元町・ベイエリアの周遊情報
Wikipedia: 元町(函館市) — 開港期以降の街区形成の背景

編集部から

五軒に通底するのは、坂と港という二つの与件をどの高さで受け取るかという判断である。倉庫は地面と同じ高さで煉瓦の壁を見せ、蔵は坂下から丸いステンドグラスを灯し、銀行建築は八幡坂のふもとで街路に正対する。そして317室の現代建築だけが、十五階の湯船から街区全体を俯瞰する。同じ1.3kmの中で、視点の高さがこれほど分かれる街区は多くない。長崎の南山手・東山手を扱った際にも同じ構図を見たが、函館では倉庫という産業建築が層に加わる点が異なる。晩秋、日没の早い時間帯にどの高さで港を見るか。その選択が、この街での一泊を決める。

次に読むなら