避暑地として一世紀以上の歴史を持つ軽井沢で、別荘建築の系譜を継ぐ現代のデザイン宿を地図上に置くなら、旧軽井沢から南ヶ丘・星野エリアの周縁までを結ぶ5軒に行き着く。坂茂が落葉松林に据えた波状の木造、旧宣教師別荘の意匠を継ぐ欧州様式の一棟、全室に温泉を備えて生まれたばかりの現代宿——いずれもこの土地固有の設計言語を持つ。星野リゾート系は主役に置かず、あくまで通過の参照として、独立系のデザイン宿だけを選んだ。梅雨明けの盛夏、木漏れ日が最も濃くなる時季に読みたい一稿である。

# 宿 エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1 SHISHI-IWA HOUSE 長倉 92 10 ¥74–¥92k 坂茂設計・波状屋根の木造リゾート
2 アンシェントホテル浅間 軽井沢 長倉 90 9 ¥69–¥89k 浅間山を望む鉱石名の9室
3 Hotel WELLIES 中軽井沢 89 9 ¥36–¥60k 英国人オーナーの欧州様式ブティック
4 ふふ 軽井沢 陽光の風 長倉 89 24 ¥128–¥196k 全室温泉・2023年開業の現代宿
5 ルゼ・ヴィラ 発地 89 5 ¥90–¥134k 5室限定・欧州様式の木造ヴィラ
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。宿により食事条件が異なり、価格帯に幅があります。

1. SHISHI-IWA HOUSE — 軽井沢町・長倉

星野温泉の西、林間に沈む波打つ木造。プリツカー賞建築家・坂茂が設計した、この土地の設計言語を最も先鋭に示す一軒。

Media Picks Score: 92 / 100  10室、デザインホテル。

目安価格 ¥74,000–¥92,000 / 泊 (2名1室・通常期)


SHISHI-IWA HOUSE — 軽井沢・長倉 · 坂茂設計、波状屋根と杉板外壁の木造リゾート
PHOTO: SHISHI-IWA HOUSE — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

設計は坂茂。パリと日本を往復しながら約二年をかけ、波状の屋根と湾曲した壁を持つ木造建築を落葉松林のなかに据えた。外壁には杉、内部には坂の代名詞である紙管が家具や意匠に用いられ、構造材そのものの美しさを見せる思想が貫かれている。2018年に開業した No.1 に続き、2022年には同じく坂の設計による No.2 が加わった。棟ごとに性格を変えながら、「軽井沢の自然を近くに感じる」「滞在者どうしの距離が心地よい」という当初の主題を建築で解いている。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、建築そのものを目的に訪れる滞在者の評価が突出して高い。林と一体化した空間のスケール感、朝夕で表情を変える光の入り方への言及が目立つ一方、ブティックゆえの限られた室数と、駅から車を要する立地は好みが分かれる点として読み取れる。館内の静けさを求める大人の滞在に向く。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 建築・現代アートを目的に旅する人、林間の静けさを優先する二人旅、坂茂の空間を体験したい人
  • 向かない: 子連れで動線に余裕を求める旅、繁華な街歩きを宿の近くで完結させたい旅程、和室の様式を望む人

具体情報

  • 最寄り駅: 中軽井沢駅から車で約7分(星野エリア周縁)
  • 客室数: 10室(No.1)ほか、坂茂設計の複数棟
  • 設計: 坂茂(2014年 プリツカー賞)
  • 開業: 2018年 No.1/2022年 No.2
  • 建築: 杉板の外壁・波状屋根、紙管を用いた家具
  • 食事: レストランでのコース


2. アンシェントホテル浅間 軽井沢 — 軽井沢町・長倉

浅間の稜線を借景に、9室それぞれが天然鉱石の名を持つ。「再生」を主題に据えた、高台の静かな一軒。

Media Picks Score: 90 / 100  9室、デザインリゾート。

目安価格 ¥69,000–¥89,000 / 泊 (2名1室・通常期)


アンシェントホテル浅間 軽井沢 — 軽井沢・長倉 · 浅間山を望む9室のデザインリゾート
PHOTO: アンシェントホテル浅間 軽井沢 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

2011年、浅間山を望む国立公園域に開業。全9室はいずれも日長石、月長石、瑠璃といった天然鉱石の名を冠し、部屋ごとに主題を変えた設えを持つ。ライブラリーと星を見るための望遠鏡を備え、館内は喧噪から距離を置いた大人の滞在に振り切られている。浴場と貸切風呂を持ち、料理と併せて一日を宿の中で完結させる構成である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、当該エリアで屈指の総合評価が確認された。浅間を望むロケーションと、室数を抑えた静けさ、食事への評価が支持を集める。一方で高台ゆえに移動は車が前提となり、街歩き中心の旅程とは相性が分かれる。記念日や、静養を目的とした滞在に向く一軒と言える。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 記念日の二人旅、浅間の眺めと静けさを求める滞在、宿の中で一日を過ごしたい人
  • 向かない: 幼児連れで賑やかさを求める旅、徒歩圏で観光を完結させたい旅程、大浴場より客室露天を最優先する人

具体情報

  • 最寄り駅: 軽井沢駅・中軽井沢駅から車(高台に立地)
  • 客室数: 9室(各室に天然鉱石の名)
  • 開業: 2011年
  • 眺望: 浅間山を望む高台
  • 設備: ライブラリー、天体望遠鏡、貸切風呂
  • 食事: 館内レストランでの食事


3. Hotel WELLIES — 軽井沢町・中軽井沢

旧軽の別荘文化が仰いだ英国の趣を、9室に凝縮する。中軽井沢の林間に置かれた欧州様式の一軒。

Media Picks Score: 89 / 100  9室、ブティックホテル。

目安価格 ¥36,000–¥60,000 / 泊 (2名1室・通常期)


Hotel WELLIES — 軽井沢・中軽井沢 · 英国人オーナーによる欧州様式のブティックホテル
PHOTO: Hotel WELLIES — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

英国人オーナーが営む欧州様式の小ホテル。9室はいずれも改装を経て、部屋ごとに異なる内装をまとう。中軽井沢駅から徒歩約10分、緑に囲まれた一角に立ち、レストランを併設する。避暑地・軽井沢が明治以来仰いできた西洋の別荘文化を、大仰にせず日常の設えとして受け継ぐ姿勢が全体を貫いている。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、長期にわたり安定して高い評価が積み上がっている点が際立つ。オーナーの人柄と、英国風の食事、手入れの行き届いた室内への言及が中心を占める。規模ゆえに大型リゾートのような設備は持たないが、その簡素さを価値と受け取る滞在者の支持が厚い。二人旅や、静かな連泊に向く。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 英国風の設えと食事を好む二人旅、駅から歩ける立地を求める人、静かな連泊
  • 向かない: 大浴場や広い共用施設を望む旅、大人数のグループ、和の様式を最優先する人

具体情報

  • 最寄り駅: 中軽井沢駅から徒歩約10分
  • 客室数: 9室(各室で異なる内装)
  • 様式: 英国人オーナーによる欧州様式
  • 改装: 2013年に改装
  • 設備: 併設レストラン、無料駐車場、自転車貸出
  • 食事: 英国風の朝食・ディナー


4. ふふ 軽井沢 陽光の風 — 軽井沢町・長倉

落葉松林に落ちる陽光を、サンルームと客室露天で受けとめる。2023年末に生まれた現代の温泉宿。

Media Picks Score: 89 / 100  24室、温泉リゾート。

目安価格 ¥128,000–¥196,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ふふ 軽井沢 陽光の風 — 軽井沢・長倉 · 全室に温泉とサンルームを備えた2023年開業の宿
PHOTO: ふふ 軽井沢 陽光の風 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

2023年12月に開業。全24室が温泉(カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉)を備え、客室には広くとられたサンルームが据えられている。長野で作られた木工品や、ガラスの端材を再形成した器など、土地とサステナブルな素材を編み込んだ設えが特徴である。「陽光」を主題に、色彩と光を積極的に取り込む点で、抑制を旨とする他の軽井沢の宿とは異なる現代的な姿勢を示す。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、開業から日が浅いながら、全室温泉とサンルームの設計、食事への評価が高く表れている。新しさゆえに歴史的な風格を求める層とは方向性が異なるが、最新の設備と明るい空間を求める滞在には合致する。二人旅から、静養を兼ねた滞在まで幅広く受け止める。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 客室温泉を重視する二人旅、明るく現代的な空間を好む人、最新設備での静養
  • 向かない: 歴史的建築の風格を求める人、価格を抑えたい旅程、素朴な山小屋の趣を望む人

具体情報

  • 最寄り駅: 中軽井沢駅から車(長倉・山の神)
  • 客室数: 24室(全室温泉付き)
  • 開業: 2023年12月24日
  • 温泉: カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉
  • 特徴: 広いサンルーム、県産木工品・再生ガラスの器
  • 食事: 館内での食事


5. ルゼ・ヴィラ — 軽井沢町・発地

薔薇を意味するチェコ語を名に持つ、5室限定の木造ヴィラ。軽井沢が受け継ぐ西洋別荘の意匠を、一棟に凝縮する。

Media Picks Score: 89 / 100  5室、スモールラグジュアリーヴィラ。

目安価格 ¥90,000–¥134,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ルゼ・ヴィラ — 軽井沢・発地 · 建築家 瀬島龍也が手がけた5室限定の欧州様式ヴィラ
PHOTO: ルゼ・ヴィラ — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

南軽井沢・発地の一角に立つ、5室限定のスモールラグジュアリーヴィラ。数々のリゾートを手がけた建築家・瀬島龍也が、自身がオーナーとして所有する唯一の建築として設計した。軽井沢の西洋文化の歴史から着想し、建物と庭を一体でデザインした欧州の邸宅を思わせる木造建築である。旧軽井沢の宣教師別荘が伝えた意匠の系譜を、現代のもてなしのなかで受け継いでいる。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、5室のみという規模がもたらす静けさと、アンティークで統一された空間、記念日の滞在としての満足度が高く表れている。設えの密度を価値とする滞在者に支持される一方、簡素なミニマルを好む層とは方向性が分かれる。二人での記念日や、非日常を求める滞在に向く。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 記念日・結婚記念の二人旅、アンティークと欧州様式を好む人、静けさを最優先する滞在
  • 向かない: ミニマルな現代建築を好む人、大人数での利用、宿泊費を抑えたい旅程

具体情報

  • 最寄り駅: 軽井沢駅から車(発地・レイクニュータウン)
  • 客室数: 5室(全室スイート)
  • 設計: 建築家 瀬島龍也(オーナー所有の唯一の建築)
  • 開業: 2019年
  • 様式: 欧州の邸宅を思わせる木造建築、庭園と一体設計
  • 対応: 記念日・ウエディング


よくある質問

Q. 訪れるのに向く時季はいつですか?

A. 梅雨が明ける7月下旬から8月にかけての盛夏は、落葉松林の緑と木漏れ日が最も濃くなり、林と一体化した現代建築の設計思想が最もよく伝わる時季です。紅葉期の10月中旬も陰影が深く、編集部が推す時期です。盛夏と連休は価格・混雑ともに上がる傾向があります。

Q. 予約のタイミングは?

A. いずれも室数が5〜24室と少なく、盛夏・紅葉期の週末は数か月前に埋まることが珍しくありません。特に SHISHI-IWA HOUSE やルゼ・ヴィラのような一桁室数の宿は、日程優先なら早めの確保が現実的です。平日は比較的とりやすい傾向にあります。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. 宿により方針が異なります。全室温泉付きで室数の多いふふ 軽井沢は比較的受け止めやすい一方、SHISHI-IWA HOUSE やルゼ・ヴィラのように室数を絞ったデザイン宿は、静けさを主題とするため年齢条件を設ける場合があります。詳細は各公式サイトで確認してください。

Q. アクセスは?

A. 5軒はいずれも軽井沢駅・中軽井沢駅から車での移動が基本です。Hotel WELLIES は中軽井沢駅から徒歩約10分と例外的に歩ける立地。東京駅から軽井沢駅までは北陸新幹線で約70分です。

Q. 建築を目的に選ぶなら?

A. 設計者が明快な順でいえば、坂茂の SHISHI-IWA HOUSE、建築家 瀬島龍也がオーナーとして設計したルゼ・ヴィラ、鉱石をテーマにしたアンシェントホテル浅間が挙げられます。旧軽井沢の西洋別荘文化の系譜を辿るなら Hotel WELLIES とルゼ・ヴィラが対照的で興味深い一対です。

本記事の参考情報

軽井沢観光協会 — エリアの観光・アクセス情報
Wikipedia: 軽井沢 — 避暑地・別荘文化の歴史的背景
Wikipedia: 坂茂 — プリツカー賞建築家の作品と経歴

編集部から

5軒に通底するのは、避暑地・軽井沢が明治以来受け継いできた別荘建築の系譜を、それぞれの語彙で現代へ更新している点にある。坂茂の紙管と波状屋根、旧宣教師別荘を思わせる欧州様式の木造、全室温泉という新しい快適の解——設計言語は異なっても、落葉松林という土地の与件に対する応答であることは共通している。星野エリアの周縁を歩けば、避暑地の百年がどのように次の建築へ渡されつつあるかが見えてくる。次に地図を広げるとき、あなたはどの設計言語から旅を始めるだろうか。