弁柄(べんがら/紅殻)を建物の表層に残す宿として、編集部が選んだのは備中吹屋と金沢の茶屋街に建つ 3 軒である。酸化鉄を主成分とするこの赤褐色の顔料は、木部の防腐と美観を同時に引き受ける実用の塗色として、江戸中期から日本の町並みに引かれてきた。黒漆喰や白漆喰のように様式の格を示す色ではなく、格子・土壁・板塀という外皮に、耐候性という機能の裏返しとして現れる色である。晩秋、光が低く回り込む季節にこの赤は最も沈んで見える。産地と消費地、その両側から一色を読む。
| # | 宿 | エリア | Score | 客室 | 目安価格 | 弁柄の現れ方 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 町家ステイ吹屋 千枚 | 岡山・高梁市吹屋 | 90 | 1棟 | — | 産地の町並みそのもの。弁柄格子と石州瓦で統一された通りに建つ明治15年築 |
| 2 | 浅の川 | 金沢・主計町 | 93 | 1棟 | ¥48–¥52k | 浅野川に正対する格子の外皮。外壁の弁柄塗り替えを公式が告知 |
| 3 | 謡町 UTAIMACHI | 金沢・ひがし茶屋街 | 91 | 3 | ¥35–¥46k | 室内側の朱壁と、窓外に広がる弁柄色の茶屋街を一枚の画面に重ねる |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。町家ステイ吹屋 千枚は集計対象となる公開販売価格が十分でないため、目安価格の掲載を見送り、公式が公表する一棟料金のみを併記しています。
酸化鉄という顔料 — 弁柄は美意識より先に機能である
弁柄は酸化鉄を主成分とする赤褐色の無機顔料で、名称はインドのベンガル地方に由来するとされる。特徴は退色の遅さと耐候性にある。有機系の赤が数年で褪せるのに対し、酸化鉄はすでに酸化しきった安定した化合物であるため、紫外線にも雨にも強い。木部に塗れば防錆・防腐の役を果たし、船舶の塗料にも用いられてきた。つまりこの赤は、装飾として選ばれた色ではなく、木を長持ちさせるために選ばれた色が結果として町の景観になった、という順序を持つ。
この順序は、実際の建物を見ると納得できる。弁柄が塗られるのは格子、出格子、板塀、軒裏、そして土壁の一部といった、雨と日射に直接さらされる面ばかりである。屋内の座敷まで赤で塗り込めることは、少なくとも町家の外皮の文法としては例外に属する。塗料としての厚みも薄い。柿渋や膠、荏油と混ぜて塗るため、木目を塗りつぶさず、経年で顔料が痩せると下地の木の縞が浮いてくる。真新しい弁柄は思いのほか明るく、赤みが立つ。それが十年、二十年と経つうちに黒みを帯び、最後は焦げ茶に近い色へ沈んでいく。私たちが「弁柄格子の町並み」と呼んで思い浮かべる落ち着いた色は、塗ったときの色ではなく、塗ってから相当の時間が経った色である。
したがって弁柄は、維持を前提とした色でもある。放置すれば沈み、沈みきれば剥げる。町並み保存地区で外壁の塗り直しが定期的に行われるのは、景観条例のためだけではなく、この顔料が本来そういう性質のものだからだ。色を選ぶという判断は、その色を塗り直し続けるという判断とほとんど同義になる。
吹屋 — 顔料の産地が、そのまま町の色になった
岡山県高梁市成羽町吹屋。標高約 550m の高原に、通りの両側が同じ赤褐色で揃った集落がある。ここは弁柄の産地である。吉岡銅山の銅鉱石に伴って産出する硫化鉄鉱を原料に、緑礬(ろうは)の結晶を窯で焼き、水槽で精製し、微粉に挽き、乾燥させ、天日で干す。この工程を経て赤い粉末が得られる。江戸時代中期に始まったこの産業は、やがて全国市場をほぼ独占した。明治10年(1877年)の第1回内国勧業博覧会では、吹屋弁柄が一等褒状を受けている。
顔料で財を成した町が、その顔料で自分の建物を塗った。当然といえば当然だが、結果として生まれた景観は、日本の他の町並み保存地区とはっきり質が違う。石州瓦の赤褐色の屋根と、弁柄塗りの格子・板壁が、通り一本ぶん連続する。色相の幅が狭いぶん、屋根勾配と格子のピッチ、つまり形の差だけが読み取れるようになる。1977年5月18日、吹屋は重要伝統的建造物群保存地区に選定された。2020年6月19日には「『ジャパンレッド』発祥の地〜弁柄と銅の町・備中吹屋〜」として日本遺産に認定されている。
加賀へ渡った赤 — 九谷の赤絵と、茶屋街の格子
吹屋の弁柄は、建物の塗料としてだけ流通したわけではない。高梁市が公表する日本遺産のストーリーによれば、この顔料は九谷焼・伊万里焼の赤絵と、輪島塗・山中塗の朱を彩った。つまり備中の山中で焼かれた粉が、加賀の窯と塗師の手に渡っていた。金沢の茶屋街で見る弁柄格子と、九谷の皿の赤絵の線は、辿れば同じ鉱山に行き着く可能性がある。産地と消費地という関係が、工芸と建築の両方で成立していたことになる。
金沢側の受け皿は二つある。ひとつは主計町。加賀藩士・富田主計の屋敷があったことに由来する町名で、浅野川の右岸に細長く伸びる。2008年6月9日に重要伝統的建造物群保存地区へ選定された。全国で初めて旧町名が復活した町としても知られる。もうひとつは東山ひがし。1820年(文政3年)に加賀藩が町立てした茶屋街で、選定は 2001年11月14日と主計町より早い。前者は川と路地の町、後者は通りと二階建ての町。同じ弁柄でも、川面の反射を受ける主計町の格子と、石畳の照り返しを受ける東山の格子では、日中に見える赤の明度が違う。
以下の 3 軒は、この色が今どう扱われているかを、産地・川沿い・通り沿いという三つの位置から読むための宿である。いずれも一棟貸しか全 3 室で、建物そのものが宿泊の対象になっている。
1. 町家ステイ吹屋 千枚 — 岡山県高梁市成羽町吹屋
弁柄の産地に建つ明治15年築の町家を、一日一組の一棟貸しに整えた 178 ㎡。色の起点に泊まる一軒である。
Media Picks Score: 90 / 100 一棟貸し(定員7名)、延床178㎡、明治15年築。

なぜ選ばれるか
公式は建物の性格を「ベンガラ格子、石州瓦といった吹屋地区の代表的な建物の美しさはそのまま」と説明する。産地の町並みの一構成要素として建っていることが、この宿の核心である。家主の口伝では明治15年(1882年)の建設。もとは銅山の総務係を営む家で、昭和期には文房具屋として使われた。屋号「千枚」は一帯の地名に由来し、かつてここから千枚田が望めたという。改修は柱や梁など使える部材を残す方針で行われ、リビングには床暖房、浴室には檜風呂が入る。伝統的な外観を保存の対象として扱いながら、内側の温熱環境だけを現代に更新した、という線の引き方が明快である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、母数は多くないものの評価は上端に張り付いており、否定的な傾向は確認できない。読み取れるのは、町並みの内側で一晩を過ごせること自体への評価と、一棟を独占する滞在密度への評価が中心という点である。一方で素泊まりが基本形で、周辺の飲食店も営業時間が限られる。食事の手配を宿と事前に詰められるかどうかで、滞在の印象は分かれると見てよい。備中高梁駅から車で約40分という位置も、評価の分岐点として機能している。

向く人 / 向かない人
-
向く:
在来工法の細部を建物単位で見たい旅、二世代・三世代で一棟を使う旅程、車を使い中国山地を横断しながら回る旅 -
向かない:
鉄道だけで動く旅程(最寄り駅から車で約40分)、宿で夕食を供されることを前提とする滞在(素泊まりが基本)、深夜到着の旅程(チェックインは原則15:00〜17:00)
具体情報
- 所在: 岡山県高梁市成羽町吹屋398(重要伝統的建造物群保存地区内)
- アクセス: JR備中高梁駅から車で約40分。駐車場は徒歩3分の位置、料金は宿泊料に込み
- 規模: 一棟貸し・一日一組、延床178㎡、定員7名(2階寝室2名+和室5名)
- 間取り: 1階=和室6畳・リビング(ミニキッチン、床暖房)・檜風呂/2階=寝室(ベッド)・和室9畳・シャワールーム
- 建築: 明治15年(1882年)築。2階寝室は中央を高く取る「舟天井」、1階の客間は居室より天井を高くする吹屋町家の構成
- チェックイン: 15:00〜17:00(隣接する「cafe燈」で手続き。17時以降は事前連絡)/アウト 〜10:00
- 食事: 素泊まり。朝食は「cafe燈」で提供(日替わり ¥2,200)、夕食は仕出しの手配が可能
- 公式一棟料金: 2名利用時 ¥37,400〜(12〜6月の日〜木曜、素泊まり・税込・駐車場込)。7〜11月および金土祝前日は上振れし、GW・年末年始は ¥55,000
2. 浅の川 — 石川県金沢市主計町
浅野川に正対する弁柄塗りの一棟貸し。外壁の弁柄を塗り直すことを公式が告知する、維持を隠さない宿である。
Media Picks Score: 93 / 100 一棟貸し(一日一組)、2018年4月開業、主計町茶屋街内。
目安価格 ¥48,000–¥52,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
この宿を上位に置いた理由は、外皮の維持を運営が公表している点にある。公式コラムには外壁のベンガラ塗装工事の予定と、その延期が記載されている。弁柄は塗り直しを前提とする顔料であり、その周期をどう回しているかは、町並み保存地区に建つ宿の実力を測る指標になる。建物は主計町の町家を再生した一棟貸しで、一日一組。浅野川に面した細長い敷地に立ち、2 階の窓は川に正対する。外皮は弁柄塗りの壁と格子である。主計町は加賀藩士・富田主計の屋敷に由来する町名で、全国で初めて旧町名が復活した町でもある。その通りで、格子のピッチと弁柄の沈み方を朝夕の光で見比べられる位置に泊まれる。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、金沢の宿泊施設のなかでも突出して高い水準で安定しており、母数も相応に積み上がっている。傾向として読み取れるのは、一棟を独占する構造への評価と、町並みのただ中に滞在できる立地への評価が並び立っていることである。一方でこの宿は 1 日 1 組・一棟貸しであり、館内での食事提供や大浴場といった旅館型のサービスは前提にない。宿が用意するものではなく、周囲の町から自分で拾ってくる滞在を組み立てられるかどうかで、満足度は分かれると見てよい。
向く人 / 向かない人
-
向く:
町並み保存地区の内側で数泊したい旅、川と路地の距離感を建物から確かめたい旅、金沢駅から公共交通で完結させたい旅程 -
向かない:
夕食・朝食を館内で完結させたい滞在(一棟貸しで食事提供は前提にない)、大浴場や館内施設を目当てとする旅、車で宿の前まで乗り付けたい旅程(茶屋街内で道が細い)
具体情報
- 所在: 石川県金沢市主計町2-1(主計町茶屋街・重要伝統的建造物群保存地区内)
- アクセス: 金沢駅東口7番乗り場からバス「橋場町」下車 徒歩約2分/金沢駅東口からタクシー約10分
- 規模: 町家一棟貸し、一日一組限定
- 開業: 2018年4月1日(2026年4月に8周年)
- 外構: 弁柄塗りの外壁と格子。2階の窓は浅野川に面する
- 周辺: 公式によれば「暗がり坂」まで徒歩30秒
- 目安価格: ¥48,000–¥52,000/泊(2名1室・通常期)
3. 謡町 UTAIMACHI — 石川県金沢市東山
ひがし茶屋街の中央に建つ全 3 室。室内の朱壁と窓外の弁柄色を、一枚の画面に重ねて見せる町家である。
Media Picks Score: 91 / 100 全3室(千・八百・二十)、2019年9月開業、ひがし茶屋街内。
目安価格 ¥35,000–¥46,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
公式は客室を「金沢らしい朱壁の和室から望む弁柄色の街並み」と説明する。この一文がそのまま設計の意図を示している。外に弁柄、内に朱。同じ赤の系統を建具の内外に配し、窓を挟んで連続させるという判断である。ひがし茶屋街のほぼ中央という立地により、2 階の窓からは通りの弁柄格子が正面に並ぶ。全 3 室で、それぞれにキッチン・浴室・洗濯機を備え、長期の滞在も想定した構成になっている。1 階のラウンジでは金沢の店のパンを用いた朝食を供する。歴史的建造物群の内側で、居住に近い動線を成立させた点が、他の茶屋街の宿と分かれるところである。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、母数が 3 軒のなかで最も厚く、その規模を保ちながら高い水準で安定している。読み取れる傾向は、立地の中心性に対する評価と、客室ごとの独立性への評価が主軸という点である。他方、2 階の 2 室は階段のみでの利用となり、ひがし茶屋街の内側にあるため宿の前まで車を寄せられず、専用駐車場も持たない。荷物が重い旅程や移動に配慮が要る同行者がいる場合は、事前の確認が要る。この制約は立地の裏返しであり、避けようのない構造だと言える。
向く人 / 向かない人
-
向く:
茶屋街の朝と夜の両方を見たい旅、キッチン付きで数泊を組みたい滞在、乳幼児を含む家族での町家滞在(0歳から受け入れ) -
向かない:
車で宿の前に横付けしたい旅程(専用駐車場なし・車両進入不可)、階段の上り下りを避けたい滞在(2階の2室は階段のみ)、ペット同伴の旅
具体情報
- 所在: 石川県金沢市東山1-16-6-1(ひがし茶屋街・重要伝統的建造物群保存地区内)
- 規模: 全3室。「千」「八百」が2階、「二十」が1階(最大3名)
- 設備: 全室にキッチン・浴室・洗濯機。浴衣は人数分を用意
- チェックイン: 入室 15:00〜19:00/アウト 〜11:00(1階スタッフ常駐 7:00〜19:00)
- 食事: 朝食付きプランを用意。1階ラウンジで 7:30〜10:00 提供、金沢の店のパンを使用
- 子ども: 0歳から宿泊可。5歳以下は2名まで添い寝無料
- 駐車場: なし。茶屋街内のため宿前まで車両で進入不可、周辺コインパーキングの利用
- 開業: 2019年9月
三軒を並べて見えるもの — 産地・川・通り
吹屋、主計町、東山ひがし。三つの重要伝統的建造物群保存地区を弁柄という一色で串刺しにすると、この顔料が場所ごとに違う仕事をしていることが分かる。吹屋では色が町の産業の記録であり、集落全体が製品見本のように統一されている。主計町では色が川との関係を担い、水面の反射で一日に二度その表情を変える。東山ひがしでは色が通りの連続性を担い、二階建ての正面が並ぶことで面の赤として立ち上がる。素材は同じ酸化鉄だが、地形と町割りが違えば、そこに現れる赤は別のものになる。
そしてこの三軒はいずれも、色を保存の対象としてではなく、更新の対象として扱っている。塗り直しを告知する宿があり、外観を残しつつ内側の温熱環境だけを入れ替えた宿があり、外の弁柄と内の朱を新しい設計として接続した宿がある。弁柄は経年で沈む顔料だが、沈むままにするか、周期を決めて戻すか、あるいは現代の意匠として引き直すか——その判断こそが、宿ごとの建築的な態度を最もよく表している。晩秋、日の角度が最も低くなる季節に、格子の前でその判断を読むのが良い。
よくある質問
Q. 弁柄と紅殻、ベンガラは同じものですか。
A. 同じ顔料を指す表記の違いです。いずれも酸化鉄を主成分とする赤褐色の無機顔料を指し、名称はインドのベンガル地方に由来するとされます。建築では格子や板塀への塗装、工芸では陶磁器の赤絵や漆器の朱に用いられてきました。本稿では引用箇所を除き「弁柄」で統一しています。
Q. 弁柄の色を見るのに適した季節はありますか。
A. 編集部が推すのは晩秋から初冬です。太陽高度が下がり、光が格子へ低い角度で回り込むため、桟の陰影と塗りの厚みの差が読み取りやすくなります。加えて空気が乾き、湿度で色が沈む夏場より赤が明るく立ちます。金沢の 2 軒は雪の時期も対比が強く、主計町では 1 月に 60cm 規模の積雪が記録された年もあります。
Q. 3 軒を一度の旅程で回ることはできますか。
A. 岡山県高梁市吹屋と金沢は直線でも 300km 以上離れており、同一旅程に組むなら 3 泊以上を見込む構成になります。金沢の 2 軒は主計町と東山ひがしで、浅野川を挟んで徒歩圏です。まず金沢で 2 泊し、弁柄格子を川沿いと通り沿いの両方から見てから、別の機会に産地である吹屋を訪ねる順序が現実的です。
Q. 3 軒とも食事は付きますか。
A. 付くのは謡町 UTAIMACHI の朝食のみです。町家ステイ吹屋 千枚は素泊まりが基本で、朝食は隣接するカフェ、夕食は仕出しの手配ができます。浅の川は一棟貸しで館内の食事提供を前提としていません。いずれも旅館型のサービスではなく、建物と町を使う滞在として設計されています。
Q. 海外からの旅行者にも向きますか。
A. 金沢の 2 軒は駅から公共交通で到達でき、重要伝統的建造物群保存地区の内側に泊まれるため、建築を目的とする旅行者に向きます。謡町 UTAIMACHI は英語ページを備えます。吹屋は最寄り駅から車で約 40 分で、レンタカーを前提とした旅程になります。いずれも一棟貸しまたは小規模施設で、常駐スタッフの時間帯が限られる点は事前に把握しておく必要があります。
本記事の参考情報
・文化庁 日本遺産ポータルサイト「『ジャパンレッド』発祥の地」 — 吹屋の弁柄産業に関する認定ストーリー
・高梁市「ジャパンレッド発祥の地 弁柄と銅の町・備中吹屋」 — 弁柄の製造工程と流通先
・文化庁 重要伝統的建造物群保存地区一覧 — 吹屋・主計町・東山ひがしの選定年月日
編集部から
色を選ぶという判断は、多くの場合、様式や好みの話として語られる。弁柄はそうではない。木を腐らせないための塗料が、たまたま赤かった。その赤を町ぐるみで塗り続けた結果、産業の記録が景観になった。三軒の宿はいずれも、その順序を建物に残している。今回は格子と土壁という外皮に絞ったが、同じ顔料は漆器の朱と陶磁器の赤絵にも回っている。器の赤と建具の赤が同じ鉱山に行き着くとき、宿で供される食器はどう見えるだろうか。次はその接点から、加賀の宿を読んでみたい。