大正15年の電話局を、隈研吾が一度ほどいて結び直した。褐色タイルの外壁はそのままに、内側だけが2020年の速度で更新されている——ACEホテル京都は、京都の都心で建築の断面をそのまま見せる一棟である。

京都・烏丸御池で「建物そのものを読む」滞在を望むなら、ACEホテル京都はその筆頭に挙がる一軒である。1926年竣工の旧京都中央電話局(吉田鉄郎設計)の躯体を残した複合施設「新風館」の中に、213室のホテルが2020年に開いた。外装と全体構成を隈研吾、内装をロサンゼルスのコミューン デザインが担い、既存の褐色タイルと現代の客室がどこで接続され、どこで線を引かれているのかが、館内を歩くだけで見えてくる。本稿は絶賛ではなく、この一棟を構造の側から一軒集中で読み解く。

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。


ACEホテル京都 — 京都市中京区・烏丸御池 · 旧京都中央電話局の躯体を継ぐ新風館の一棟
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目安価格 ¥58,000–¥106,000 / 泊 (2名1室・通常期)

歴史と建築

この一棟を読むうえで起点になるのは、ホテルではなく1926年(大正15年)の建物である。逓信省の技師・吉田鉄郎が設計した旧京都中央電話局は、褐色タイルとアーチ窓を連ねたモダニズム初期の逓信建築で、長く烏丸通のランドマークだった。2001年に商業施設「新風館」へ転用され、2016年からの再開発で隈研吾が全体構成を引き受けた。ここで下された判断が、外壁を壊さず「保存する部分」と「更新する部分」の境界を明確に引くことだった。

結果として、烏丸通側には旧電話局の褐色タイル面がほぼそのまま残り、内側には木を多用した新築棟と中庭が挿し込まれる。既存と新規の接続点——タイル壁の裏側で天井高が切り替わる箇所や、旧躯体の窓が客室の内窓として再利用される場面——を探すと、この建築がどこで時代の線を引いたのかが見えてくる。派手な意匠の上書きではなく、二つの年代を並置したまま縫い合わせた点に、隈の抑制がある。


ACEホテル京都 — 新風館の中庭アーケード · 旧躯体と木造新築棟が囲む半屋外空間
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滞在の体験

内装を担ったのはコミューン デザイン。西海岸のミッドセンチュリーと京都の工芸を同じ棚に載せる編集手法で、客室はStandard・Deluxe・Historic・Tatami Suite・Loft Suite・Ace Suiteなど9タイプに分かれる。体験が最も分岐するのは「Historic」と、それ以外である。Historic客室は旧電話局の躯体側に配され、厚い壁と既存窓の割付が残るため、同じ建物でも空気の密度が違う。一方Loft Suiteは新築棟の吹き抜けを使い、階段でつながる二層構成をとる。

Tatami Suiteでは畳と作り付けの家具、和紙や真鍮といった素材が、アメリカ発ブランドの文法の中に置かれる。土産物的な「和」ではなく、素材の手触りとして日本を挿入している点が、この宿の設計思想を端的に示す。客室で一つ数値を挙げるなら、館内3つのレストラン——ロビー階のStumptown Coffee Roasters(日本初出店)、メキシカンのPIOPIKO、屋上のMr. Maurice’s Italian——が滞在の時間帯を昼夜で切り替える装置として機能している。


ACEホテル京都 — Tatami Suite · 畳と真鍮・和紙を西海岸の文法に置いた客室
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集約レビューが映すこの宿の本質

公開レビューデータを集計すると、支持が集まるのは建築と空間そのもの、そして中庭やロビーの滞留体験である。デザイン目的で選び、館内で長く過ごす層の評価が一貫して高い。逆に、静粛性や旅館的なきめ細かさを第一に求める層からは、都市型デザインホテルゆえの賑わいや音への言及が見て取れる。つまりこの宿は、静けさを買う場所ではなく、都心の熱量ごと設計された空間に身を置く場所として受け取られている。

もう一点、集約傾向として現れるのは客室タイプ間の体験差である。同じ館内でも躯体側と新築棟では印象が分かれ、「どの部屋を選ぶか」が満足度を左右する。均質なサービスの快適さではなく、選択と読み解きを楽しむ宿だと言える。

立地と周辺

立地は京都市中京区車屋町、地下鉄烏丸御池駅の南改札に直結する。烏丸線・東西線が交差する結節点で、京都駅からは地下鉄で5分ほど。改札から傘なしでロビーへ入れる利便は、都市型ステイケーションの要件を満たす。新風館の中庭アーケードは宿泊者以外にも開かれ、ホテルが街区の通路を兼ねる構成になっている。

徒歩圏には烏丸・三条・寺町の商店街、少し足を延ばせば錦市場や二条城が入る。観光の拠点というより、京都の日常の密度の中に滞在を差し込む立地である。ロビー階のStumptown Coffeeは宿泊者以外の往来も多く、内と外の境界を曖昧にしたまま一日が回っていく。


ACEホテル京都 — ロビー階のStumptown Coffee Roasters · 日本初出店のポートランド系ロースタリー
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具体情報

  • 所在地: 京都府京都市中京区車屋町245-2(新風館内)
  • 最寄り駅: 地下鉄烏丸御池駅(烏丸線・東西線)南改札直結/京都駅から約5分
  • 室数: 213室(Standard/Deluxe/Historic/Tatami Suite/Loft Suite/Ace Suite など9タイプ)
  • 飲食: Stumptown Coffee Roasters(日本初出店)、PIOPIKO、Mr. Maurice’s Italian(屋上バー併設)
  • 建築: 旧京都中央電話局(1926年・吉田鉄郎設計)を保存活用、外装・構成=隈研吾、内装=コミューン デザイン
  • 開業: 2020年6月

こんな旅人に

  • 建築と保存・再生の断面を、館内を歩きながら自分で読み解きたい人
  • 京都駅・繁華街に直結する都心で、連泊型のステイケーションを組みたい人
  • 均質な静けさより、都市の熱量ごと設計された空間に身を置きたい人
  • 逆に、旅館的な静粛ときめ細かな接遇を第一に望むなら、別の一軒が向く

Media Picks Score

94 / 100 — 評価の内訳: 烏丸御池直結の立地、旧電話局を継ぐ建築の固有性、隈研吾+コミューンという設計の来歴、3つの飲食による滞在時間の設計、そして規模を保ちながら運営の一貫性を崩さない点を編集部の評価軸として加点した。価格帯は都心デザインホテルとして上位に位置し、静粛性を最優先する旅程では評価が割れる余地を残す。

よくある質問

Q. この建物はもともと何だったのですか?

A. 1926年(大正15年)竣工の旧京都中央電話局です。逓信省の吉田鉄郎が設計した褐色タイルの逓信建築で、その外壁を保存したまま複合施設「新風館」へ再生し、内側にホテルが挿入されました。

Q. 設計は誰が手がけましたか?

A. 新風館全体の建築・外装構成を隈研吾、ホテル内装をロサンゼルスのコミューン デザインが担当しました。既存の躯体を残す部分と新築部分の境界が明確に設計されています。

Q. アクセスは?

A. 地下鉄烏丸御池駅(烏丸線・東西線)南改札に直結し、京都駅からは地下鉄で約5分です。改札から屋内でロビーへ入れます。

Q. 客室はどう選べばよいですか?

A. 旧躯体側の「Historic」は厚い壁と既存窓の割付が残り、新築棟の「Loft Suite」は二層構成、「Tatami Suite」は畳と工芸素材を用います。建物の履歴を体感したいならHistoric、空間の広がりを求めるならLoftやSuite系が向きます。

Q. 静かに過ごしたい旅程にも合いますか?

A. 中庭やロビーに人が往来する都市型デザインホテルのため、旅館的な静粛を最優先する滞在には賑わいが気になる場合があります。設計された空間と街の熱量を含めて楽しむ旅程に合います。

本記事の参考情報

京都府観光連盟 公式サイト — エースホテル京都の施設情報
Wikipedia: 新風館 — 旧京都中央電話局からの再生の経緯
Wikipedia: 吉田鉄郎 — 原設計者と逓信建築の背景

編集部から

ACEホテル京都は、京都という土地で「新しさ」をどう扱うかの一つの解答である。老舗旅館が時間の連続で価値を積むのに対し、この一棟は1926年と2020年という二つの年代を並置し、その断面を隠さずに見せる。だからこそ、部屋を選び、壁の切り替わりを探し、中庭で街との境界が溶ける様を眺める——読む行為そのものが滞在になる。次は、同じ都心プレミアムの文脈で安藤忠雄やSANAAが手がけた一棟を、同じ「建築の断面」の視点で並べて読んでみたい。あなたなら、Historicと新築棟、どちらの夜を選ぶだろうか。

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