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中庭と坪庭 — 宿の建築が「囲む」という設計判断、その空間の正体

外を取り込む借景、外周を歩かせる池泉回遊式とは対極に、宿の建築には「囲んで外を遮断する」という選択がある。中庭と坪庭——建物が外部空間を完全に取り囲んだとき、その内側に何が起きるのか。京都の町家旅館に残る通り庭から坪庭への連続、金沢の料亭旅館が抱える中庭、そして数寄屋の別邸が囲い込んだ庭。梅雨入り前後、囲まれた庭が雨を受けはじめるこの季節に、囲うという設計判断を建築論として読む。 本記事の要点 中庭・坪庭は「外を見せる」装置ではなく、外を遮り光と音を内に閉じ込める装置である 京都町家の坪庭は採光・通風という現実的要請から生まれた光井戸が起点 本稿で読む宿は俵屋旅館(京都・18室)、浅田屋(金沢・5室)、吉田山荘(京都・11室)の3軒 料金帯はおおむね1泊2食5万円以上、最小5室という規模が囲いの密度を支える 囲うことで生まれるのは眺望ではなく、視線の遮断と静けさという別種の体験 最終更新: 2026年6月8日 ※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。 囲うという、設計の選択 庭は本来、外にある。それを建物の内側に引き入れ、四方を壁と縁で囲ったとき、庭は風景であることをやめ、装置になる。中庭と坪庭という言葉が指すのは、この反転である。借景が遠景を室内に取り込み、池泉回遊式が客に外周を歩かせるのに対して、囲われた庭は外との関係を断つことで成立する。眺めるための庭ではなく、光を落とし、音を閉じ込め、視線を遮るための庭。設計者がここで下しているのは、引き算の判断と言える。 京都の町家では、この判断は思想以前に必要から生まれた。間口が狭く奥行きの深い敷地——いわゆる鰻の寝床に、玄関から奥へ通り庭が貫き、その途中に坪庭が穿たれる。坪庭はわずか一坪、二坪の小さな空地だが、奥の部屋まで光を導く光井戸として、また熱気を抜く煙突として機能した。装飾ではなく、空気と光の設計だったのである。建物が密集する都市の内側で、外を取り込めないなら内に庭を抱えるしかない。囲うとは、都市の制約に対する建築の回答でもあった。 俵屋旅館 — 京都・麸屋町通 通り庭から坪庭へ、光が奥へ受け渡される300年余の町家。囲いの原型がここにある。 Media Picks Score: 94 / 100  18室、料理旅館。 PHOTO: 俵屋旅館…

2026 . 06 . 08
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膳組という時間 — 一汁三菜・二汁五菜・本膳という料理の構造を、宿はどう客室に運ぶか

一汁三菜・二汁五菜・本膳——膳の構造そのものが、廊下の幅と客室の床面積を決めている。客室で食事を供し続ける高級旅館四軒を、建築の側から読む。

2026 . 06 . 07
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簾戸と御簾 — 夏支度を施す高級旅館 5軒、建具入替の作法を建築から読む

京都・有馬・城崎・修善寺の数寄屋普請 5 軒で、夏支度の建具入替を建築から読む。襖→簾戸、障子→葦戸、御簾の差し入れ。職人契約・保管庫・入替時期の違いを編集部が並べた。

2026 . 06 . 06
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AZUMA FARM KOIWAI — エイドリアン・ゼッカの「土に立ち返る農場ステイ」、小岩井の 2026 を読む

アマン創業者エイドリアン・ゼッカ率いる Azumi Japan が JR 東日本と組み、2026 年 4 月に小岩井農場敷地内へ開業した AZUMA FARM Koiwai。約 3,000 ha のうち 8 ha を切り取り、24 棟の独立宿泊棟を散在させた農場ステイ型リゾートを、建築計画として読み解く。

2026 . 06 . 05
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南会津・檜枝岐から尾瀬の麓まで — 福島の山あい、室数10以下の山宿 5軒

梅雨入り直後の宿で実体として鳴る音は、川音でも風でもなく、軒先と樋から落ちる雨である。新井旅館・富士屋ホテル・奈良ホテルを引きながら、雨を受ける建築装置を建築語彙で読む短文エッセイ。

2026 . 06 . 03
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国宝寺社の隣で泊まる — 仁和寺・延暦寺・東大寺・興福寺・東寺の至近に佇む高級宿 5 軒

世界遺産・国宝寺社の境内またはすぐ隣に佇む高級宿 5 軒を、寺社との動線・建築・運営思想の観点で並べた Top 5。仁和寺御室会館・延暦寺会館・ふふ奈良・奈良ホテル・デュシタニ京都を編集部が選定。

2026 . 06 . 02
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借景という設計判断 — 庭の外を取り込む宿、囲い込む宿

17世紀の作庭書『園冶』に遡る「借景」の3類型(遠借・隣借・俯借)を、京都・東山の数寄屋、城崎の谷あいの内庭、有馬の谷川沿いの古い棟という3軒の解として観察する。梅雨明けの青葉の季節に。

2026 . 05 . 31
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茅葺と合掌、屋根の構造で選ぶ高級旅館 5 軒 — 飛騨から南会津まで

飛騨と白川郷を中心に、美山と庄川峡まで広げた屋根構造で選ぶ高級旅館 5 軒。合掌・茅葺・入母屋・古民家移築を併置し、初夏に屋根を見上げる旅程を組む。

2026 . 05 . 29
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借景という設計判断 — 庭の外を取り込む宿、囲い込む宿

東山を借景に取り込む京都の宿、山並みを縁どる城崎の老舗、外界を遮断して内庭で完結させる有馬の宿。三軒の対比から借景という設計判断の現在を読む。

2026 . 05 . 24
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客室数 6 以下という設計 — 一日数組限定の高級旅館 5 軒

北軽井沢から伊豆、能登、阿蘇まで、客室 6 以下に絞った高級旅館 5 軒。なぜ小さく作るのか、その構造を客室・運営・建築の三層で読む編集記事。

2026 . 05 . 23