湯布院から阿蘇北麓を越え、黒川、そして大分・熊本県境の杖立まで — 別府湾を挟まず、九州内陸の温泉郷だけを高級旅館で継ぐ二泊三日の車旅を提案する。海側の情景を意図的に外し、山あいの湯と数寄屋建築、離れの造作、朝湯の設計に集中する連泊の組み方だ。梅雨明けから盛夏、標高差で夜がまだ涼しい時期を狙うと、宿の意図が最もよく届く。
| 泊 | 宿 | 温泉地 | Score | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1泊目 | 山荘 無量塔 | 由布院・塚原 | 95 | 12 | ¥176–¥196k | 塚原高原の数寄屋離れ、蕎麦とショコラの複合村 |
| 2泊目 | 山荘 竹ふえ | 黒川・田の原 | 89 | 12 | ¥260–¥326k | 五千坪の敷地、自家源泉、離れ主体の囲炉裏部屋 |
| 3泊目 | 旅館 かねいし | 杖立 | 87 | 7 | ¥28–¥40k | 杖立川に面する全室川向き、2020年全面改装 |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
1泊目: 山荘 無量塔 — 由布院・塚原高原
由布院盆地の外側、塚原高原に十二の離れ。骨董と数寄屋を編んだ「懐古と革新」の作法が、初日の起点として静かに効く一軒。
Media Picks Score: 95 / 100 12室、離れ主体の高級旅館。
目安価格 ¥176,000–¥196,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
1992年開業。由布院の中心、湯の坪街道の喧騒から車で十数分上がった塚原高原の一角にある。総客室は十二、すべて離れ。母屋を持たず、蕎麦処「不生庵」、B-speak のロールケーキ、ショコラの théomurata、Tan’s bar、美術館 artegio を敷地の中に点在させる「宿を核とした村」の構えが、他の由布院旅館とは明確に異なる。骨董と数寄屋、そして現代の照明・音響の解像度を同居させる編集の妙が、この宿の核だ。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、部屋の造作と食事、館内の動線設計、いずれも高い水準で評価が並ぶ。とくに「敷地内の複数施設を巡る夕食後の時間」への言及が繰り返される。一方で、「由布院駅前を歩きたい旅」との相性は低いという反応も見られ、動と静の選択がはっきり分かれる宿だと言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
建築と骨董家具に関心のある大人二人、由布院駅前を歩かず「山側」で完結させたい旅、記念日の初日 -
向かない:
湯の坪街道の商店街散策を旅の主軸に置きたい人、公共交通で動きたい旅程(塚原高原までは車が前提)
具体情報
- 最寄り駅: JR由布院駅からタクシーで約15分(車で約12分)
- 客室: 全12室・すべて離れ、全室源泉掛け流し温泉付き
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 夕食・朝食ともに部屋食または個室
- 創業: 1992年
- 敷地内施設: 美術館 artegio、蕎麦処、ショコラ工房、バー、菓子店を併設
2泊目: 山荘 竹ふえ — 黒川・田の原
五千坪の傾斜地に十二の離れ、自家源泉三十の湯。囲炉裏部屋で夕食を取る、黒川の中でも別格の敷地スケール。
Media Picks Score: 89 / 100 12室、全室離れの高級旅館。
目安価格 ¥260,000–¥326,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
黒川温泉の中心街から少し外れた田の原、五千坪の傾斜地に建つ。全十二の離れと湯屋、自家源泉から引く約三十の湯が敷地内に点在する構成で、黒川の「街を歩いて湯を巡る」通例とは異なり、この宿では敷地内で完結する。客室はいずれも囲炉裏、畳、内湯を持ち、うち八室は五メートル超の露天も備える。夕食・朝食ともに部屋の囲炉裏で供される。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、敷地の広さ、湯の質、囲炉裏での食事、それぞれについて肯定的な評価が中心を占める。一方で、価格帯と繁忙期の運営バランスに触れる声もあり、宿の設計思想と料金設定を理解して選ぶことが向いている宿だと編集部は見る。宿泊人数の多い時期を外し、平日夜に静かに滞在する組み方が、この宿の造作を最もよく引き出す。
向く人 / 向かない人
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向く:
敷地内で完結する滞在を望む二人、囲炉裏部屋での夕食を軸にしたい旅、記念日のメイン一泊 -
向かない:
黒川温泉街の入湯手形巡りを主軸にしたい旅、素泊まりや軽い夕食で済ませたい滞在、価格に対する厳しい費用対効果を重視する場合
具体情報
- アクセス: 熊本空港から車で約1時間20分、由布院方面から車で約1時間20分(阿蘇北麓経由)
- 客室: 全12室・すべて離れ、うち8室に5m超の露天風呂
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 夕食・朝食ともに部屋の囲炉裏で提供
- 温泉: 自家源泉、敷地内に約30の浴槽
- 敷地面積: 約5,000坪
3泊目: 旅館 かねいし — 杖立温泉
大分・熊本県境の谷、杖立川沿いに全七室。2020年全面改装、川面に開く静かな締めの一軒。
Media Picks Score: 87 / 100 7室、川沿いの改装小旅館。
目安価格 ¥28,000–¥40,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
杖立温泉は大分・熊本の県境、杖立川の峡谷に細く伸びる温泉街だ。往時は九州でも指折りの湯治場だったが、今の宿数は多くない。その中で、かねいしは2020年に全面改装され、七室すべてが川に面する構成に組み直された。木造の内装、檜風呂付き準スイート、五十平米の広間タイプの部屋。派手さはないが、蒸し湯や立ち湯といった湯治文化の設備を残しつつ、意匠を現代の落ち着いた線で締めている。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、川に面する部屋の静けさ、湯そのものの質、朝食の細やかさへの評価が高い。杖立という地の知名度が低いぶん、期待の水位を過剰に上げずに訪れた滞在の満足度が高く出る傾向が読み取れる。一泊目・二泊目のスケール感の後にここに至ると、旅の終わりに向けて解ける温度感がちょうどよく整うと編集部は見る。
向く人 / 向かない人
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向く:
三泊目に「抑えた締め方」を望む旅、湯治場の空気に触れたい人、川音を寝室に取り込みたい二人 -
向かない:
三泊とも同水準の高級ラインを揃えたい旅、大人数の食事場面を求める人、駅から公共交通で入りたい旅程(最寄り駅・空港からは車が前提)
具体情報
- アクセス: 黒川温泉から車で約30分、大分自動車道・日田ICから車で約40分
- 客室: 全7室、うち檜風呂付き準スイート、50㎡のスイートを含む
- 改装: 2020年に全面改装のうえ再オープン
- 温泉: 源泉掛け流し、大浴場・蒸し湯・立ち湯
- 食事: 夕食・朝食ともに提供
- 立地: 全室が杖立川に面する
ルート設計 — 三日間の運転と時間配分
初日は昼過ぎに JR 由布院駅または大分空港経由で塚原高原へ入る。無量塔チェックインは15時から。二日目、11時にチェックアウトし、県道11号(やまなみハイウェイ)経由で阿蘇北麓を南下、黒川へ。所要は正味1時間30分ほどだが、飯田高原・瀬の本高原で光と季節を確認する寄り道を含めるとちょうど昼過ぎに黒川着となる。竹ふえチェックインは15時から。三日目、11時にチェックアウトし、国道212号を北へ約30分、杖立温泉へ。かねいしチェックインは15時までの時間帯を、日田市街や小国町の水源地で埋める設計が組みやすい。翌日は大分自動車道・日田ICから2時間で福岡空港、あるいは久留米・博多方面へ抜けられる。
よくある質問
Q. 車以外の移動手段はありますか?
A. 由布院までは JR 特急ゆふいんの森が利用できるが、無量塔・竹ふえ・かねいしのいずれも公共交通でのアクセスは限定的で、二泊三日で三軒を継ぐには実質的にレンタカーが前提になる。大分空港・熊本空港・福岡空港のいずれかで乗り捨てを組む形が現実的だ。
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. 梅雨明けから盛夏、標高500〜600mの塚原高原・田の原で夜が涼しい時期を編集部は推す。紅葉期(11月)はいずれの温泉地も観光の需要が上がり、価格帯も上振れする。逆に冬(1〜2月)は雪と道路凍結を考慮すると、車での連泊移動には慎重さが要る。
Q. 予約のタイミングは?
A. 無量塔・竹ふえは3〜6ヶ月前から埋まり始める。特に週末・連休は半年前を目安に押さえる形が現実的。かねいしは相対的に予約が取りやすいが、全7室と少ないため、週末は1〜2ヶ月前を目安にする。
Q. 三軒とも子連れで泊まれますか?
A. 三軒とも成人向けの静けさを主眼に設計されている。乳幼児連れの受け入れ可否は各宿で異なるため、公式サイトから直接確認する形が確実だ。この二泊三日の記事は、成人二名の旅程として組んでいる。
Q. 湯布院・黒川・杖立の湯の違いは?
A. 由布院は無色透明の単純温泉が主で肌当たりが柔らかい。黒川は源泉ごとに硫黄泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉の混在があり、宿・外湯ごとに個性が強い。竹ふえは自家源泉で炭酸水素塩泉・硫酸塩泉を主体とする。杖立は湯量が豊富な塩化物泉系で、蒸し湯の文化が残る。この二泊三日は、性格の異なる三つの湯を連続で体験する構成でもある。
本記事の参考情報
・JNTO 大分県観光情報 — 由布院・湯布院エリアの背景
・Wikipedia: 黒川温泉 — 温泉街の成り立ちと入湯手形の歴史
・Wikipedia: 杖立温泉 — 大分・熊本県境の湯治場としての背景
編集部から
この二泊三日は、九州の温泉郷を「海側を挟まない」という一点で編み直した提案だ。別府湾を挟む王道ルートは扱いが多く、代わりに山あいだけを継ぐ組み方を、宿の格と静けさの温度差で設計している。初日の無量塔で編集された環境を体験し、中日の竹ふえで敷地に閉じ、最終日のかねいしで湯治場の質朴に降りていく — スケールを段階的に落としていく連泊の構造が、この旅程の核だ。海側の連泊、あるいは同じ内陸で秋の紅葉期を狙う組み方を、次のテーマとして続けたい。