裏磐梯の湖沼群のまわりで客室10室以下の宿を探すなら、五色沼入口から桧原湖東岸にかけての約4kmの範囲に建つ5軒が候補になる。1888年の磐梯山噴火で川が堰き止められ、桧原湖、小野川湖、秋元湖と五色沼の沼々が生まれました。その縁に散らばるのは、建築家の名で語られる宿ではなく、少人数で営む小さな洋館と山小屋型の宿です。標高800m前後、紅葉は10月中旬から下旬。編集部は室数、湖と探勝路からの距離、そして食堂と風呂の構成を軸に5軒を選びました。湖岸に直接面するのは1軒だけ、という事実も含めて記します。

# ホテル エリア 客室 目安価格 1行特徴
1 Lakeside Inn Beehive 剣ヶ峯・小野川湖寄り 8 ¥20–¥23k 8室のうち通常5室だけを売る。漆喰と無垢材の客室、貸切の温泉露天が2つ
2 イルレガーロ 五色沼入口 6 ¥36–¥42k 1階がイタリア料理店、2階に6室。五色沼自然探勝路の東口まで歩ける唯一の一軒
3 おやど風来坊 曽原・桧原湖東岸 5 ¥18–¥22k 囲炉裏テーブルで会津の郷土料理と地酒。磐梯山を望む貸切サウナを持つ5室
4 オーベルジュ渓翠館 小野川原 8 ¥22–¥24k 約8mの吹き抜けダイニングと囲炉裏の間。洋食と中華の日替わりコース、全室バス・トイレ付
5 こたかもり 桧原湖東岸 7 — 桧原湖まで徒歩0分。2014年12月に改装した7室、掘りごたつの食事処に暖炉
↕︎ 地図右下の角をドラッグすると高さを調整できます

紺の番号が宿、えんじ色の印が五色沼自然探勝路の東口にあたる五色沼入口バス停。探勝路はここから西へ約4km、桧原湖畔まで続きます。



※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。日ごとの最安プランを基準にしているため、下限は素泊まりや朝食のみのプランを含む場合があります。

1. Lakeside Inn Beehive(ビーハイブ) — 剣ヶ峯・小野川湖寄り

8室ありながら売るのは1日5組。漆喰と無垢材の客室に、貸切の温泉露天を2つ備えた料理宿。

8室、小規模な料理宿。

目安価格 ¥20,000–¥23,000 / 泊 (2名1室・通常期)


Lakeside Inn Beehive — 福島県北塩原村・裏磐梯 · 板張りの床にソファとキッチンを備えた客室、全8室の料理宿
PHOTO: Lakeside Inn Beehive — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

客室数を絞るという運営判断が、この宿の輪郭を決めています。公式の案内では客室は6タイプ8室ですが、通常は5室のみを販売する1日5組の宿。2022年3月に改装した2室は約40㎡で、床は無垢材、壁と天井は漆喰仕上げ、キッチンを備えます。玄関には高さ10mの吹き抜けと薪ストーブ。夕食はオーナーシェフによるフレンチとイタリアンの創作コースで、1時間半から2時間をかけて供される構成です。大浴場は持たず、石張りの「月」とタイル張りの「星」、2つの貸切温泉露天を40分単位で使います。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、今回の5軒のなかで評価件数が最も多く、総合評価も最上位の水準にあります。件数が千を超えてなお評価が崩れていない点は、1日5組という受け入れ数の絞り方と整合すると読めます。一方、貸切温泉は到着後に空き枠を押さえる方式で事前予約ができず、脱衣所も着替えに足りるだけの寸法だと公式に明記されています。浴場の広さを宿選びの軸に置く人とは、期待がずれる余地があります。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 二人で夕食に時間をかける旅、キッチン付きの約40㎡で連泊する滞在、薪ストーブのある冬の裏磐梯
  • 向かない: 大浴場を求める人(貸切温泉のみ)、湖面を客室から見たい人(湖岸には面していない)、到着が遅くなる旅程(貸切温泉は到着順に枠を取る)

具体情報

  • アクセス: JR猪苗代駅から路線バスで裏磐梯方面へ。五色沼入口バス停から道のり約2.3km、磐越道・猪苗代磐梯高原ICから車
  • 客室: 6タイプ8室(通常は5室を販売)。約14〜24畳の和洋室・洋室で、広い2室は約40㎡。全室に展望風呂(温泉ではない)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 食事: 夕食はフレンチとイタリアンの創作コース、朝食は地元のパンと会津地鶏の卵料理
  • 風呂: 貸切温泉露天「月」「星」の2カ所、40分単位・追加料金なし
  • 改装: 2022年3月に204号室・206号室を改装
  • 禁煙: 全客室禁煙(館内に喫煙室)

2. ホテル&リストランテ イルレガーロ — 五色沼入口

1階がリストランテ、2階に6室。五色沼自然探勝路の東口へ歩いて向かえる、食堂付きの宿。

6室、レストラン併設の小規模ホテル。

目安価格 ¥36,000–¥42,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ホテル&リストランテ イルレガーロ — 福島県北塩原村・五色沼入口 · 1階がイタリア料理店、2階に全6室の客室を置く建物の外観とテラス
PHOTO: イルレガーロ — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

5軒のなかで、五色沼自然探勝路に最も近い一軒です。五色沼入口バス停から道のりで約240m、車を持たない旅程でも成立します。建物は1階がイタリア料理店、2階が全6室の宿という二層構成。ツインは26㎡で、大きな窓から磐梯山やデコ平を望む客室があり(眺めは客室によって異なる)、10畳の和室は西吾妻の連峰に向きます。夕食は前菜、パスタ、肉料理、ドルチェと進むコース。シェフが自家菜園の野菜と地元の食材で組み立てるという、レストランが主語の宿です。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価件数は数百件の規模で、総合評価は5軒中の上位に位置します。レストランとして昼も営業する店であり、宿泊者だけに閉じた静けさを期待するより、食堂の2階に泊まるという形式として読むのが妥当です。国道459号沿いの五色沼入口という立地は探勝路の起点としては申し分ない反面、森の奥に籠もる感覚は薄く、価格帯も5軒のなかでは最も上に位置します。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 朝いちばんに五色沼を歩く旅、路線バスで動く旅程、夕食をイタリア料理のコースで組みたい二人
  • 向かない: 温泉を目的にする人(客室バスが中心)、湖岸の静けさを求める人(国道沿いの立地)、和食を望む旅

具体情報

  • アクセス: JR猪苗代駅から路線バスで五色沼入口下車、道のり約240m(徒歩約3分)。磐越道・猪苗代磐梯高原ICから車で約15分
  • 客室: 全6室(ツイン・ダブル・和室10畳)。ツインは26㎡
  • 食事: 1階のリストランテで夕食コースと朝食。夕食は17:30〜、ラストオーダー19:00
  • レストラン定休: 火曜(祝日は営業)、ほか不定休あり
  • 駐車場: あり・無料

3. おやど風来坊 — 曽原・桧原湖東岸

囲炉裏テーブルで会津の地酒を酌む5室の宿。庭先に、磐梯山と向き合う貸切サウナ。

5室、家族経営の小宿。

目安価格 ¥18,000–¥22,000 / 泊 (2名1室・通常期)


おやど風来坊 — 福島県北塩原村・曽原 · 磐梯山の側に窓を取った板張りの食堂、全5室の家族経営の宿
PHOTO: おやど風来坊 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

宿の主人が自ら「居酒屋のような」と名乗る、設えより人と酒が前に出る一軒です。食堂には囲炉裏テーブルが据えられ、会津の郷土料理を軸にした和食と地酒が並びます。もうひとつの核が、磐梯山を正面に据えた貸切サウナ。ロウリュができ、水風呂と外気浴を挟みながら1回最大3時間を占有できます(1名4,500円、2名7,000円)。桧原湖のワカサギ釣りやフライフィッシングの案内も行い、湖沼群を「眺める」のではなく「使う」ための拠点として機能しています。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価件数は百数十件と中規模ながら、総合評価は5軒のなかでも最上位に近い水準です。ただし設備は簡素で、風呂は温泉ではなく男女別のタイル張りを貸切で使う形式、ペット同室の1室はバス・トイレなしと公式に明記されています。客室の仕様で選ぶ宿ではなく、食卓と主人との距離の近さをどう受け取るかで評価が分かれる型の宿と言えます。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 会津の地酒と郷土料理を目当てにする旅、ワカサギ釣りやフライフィッシングの拠点、サウナを貸切で使いたい二人
  • 向かない: 温泉を求める人(風呂は温泉ではない)、客室内のバス・トイレを前提にする人、食卓で他の客と距離を置きたい人

具体情報

  • アクセス: 五色沼入口バス停から道のり約4.1km。磐越道・猪苗代磐梯高原ICから車
  • 客室: 5室(ツイン・トリプルほか)。全室禁煙
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 食事: 囲炉裏テーブルで和食中心の夕食、会津の地酒
  • サウナ: 磐梯山を望む貸切サウナ。1名4,500円・2名7,000円、1回最大3時間、利用1時間前までに予約
  • 駐車場: 無料7台

4. オーベルジュ渓翠館 — 小野川原

梁を渡した約8mの吹き抜けで、洋食と中華の日替わりコース。芝庭の先に森が続く8室。

8室、食事を軸にした小宿。

目安価格 ¥22,000–¥24,000 / 泊 (2名1室・通常期)


オーベルジュ渓翠館 — 福島県北塩原村・小野川原 · 高さ約8mの吹き抜けに梁を渡したダイニング、全8室の宿
PHOTO: オーベルジュ渓翠館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

食堂の断面が印象に残る一軒です。ダイニングは高さ約8mの吹き抜けで、濃色の梁が上方を横切り、高窓から芝庭と森の緑が入ります。食後は囲炉裏を切ったラウンジへ。夕食は洋食と中華を日替わりで出すフルコースという独自の構成で、主菜をフォアグラやフカヒレに替える上位の献立も用意されています。客室は和室2室を含む全8室がバス・トイレ付。公式料金は1泊2食11,000円(1名・税込)で、週末や繁忙期も同額という明快な設定です。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価件数は百件を超える一方、総合評価の集計値が取得できておらず、Media Picks Scoreは控えめに算出しています。点数の低さは評価の低さを意味しない、という点は断っておきます。館内でフクロウを飼う宿でもあり、公式サイトでも前面に出されています。動物のいる宿という性格をどう受け取るかは、予約の前に確かめておきたい要素です。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 夕食の献立で宿を選ぶ人、客室内のバス・トイレを条件にする旅、料金の季節変動を避けたい旅程
  • 向かない: 温泉を目的にする人、動物が苦手な人(館内でフクロウを飼育)、路線バスだけで動く旅(最寄りの便が少ない)

具体情報

  • アクセス: 長瀬川入口バス停から徒歩1分、剣ヶ峰バス停から徒歩10分、小野川湖入口バス停から徒歩15分。磐越道・猪苗代磐梯高原ICから18km
  • 送迎: 小野川湖入口バス停まで(夕食付きプラン2名以上、事前相談。繁忙期は不可の日あり)
  • 客室: 全8室(ツイン5・トリプル1・和室8畳と10畳)。全室バス・トイレ付、全室禁煙
  • 食事: 洋食と中華の日替わりフルコース
  • 公式料金: 1泊2食 11,000円/上位献立 12,650円(1名・税込、通年同額)
  • 五色沼まで: 五色沼入口バス停まで道のり約2.4km

5. こたかもり — 桧原湖東岸

桧原湖の岸まで徒歩0分。釣りの拠点を兼ね、2014年12月に改装した7室の湖畔宿。

7室、湖畔の釣り宿。

目安価格 集計に足る販売価格が得られなかったため掲載を見送ります(公式料金は下の具体情報に記載)


こたかもり — 福島県北塩原村・桧原湖東岸 · 2014年12月に改装した煉瓦色の外壁と切妻屋根の本館、全7室の湖畔の宿
PHOTO: こたかもり — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

5軒のうち、湖岸に直接面するのはこの一軒だけです。公式の表現は「桧原湖まで徒歩0分」。2014年12月に改装した本館は全7室で、20畳の和室1室、和洋室2室、洋室4室という構成。天候に恵まれれば桧原湖と磐梯山を一望できます。食事処は掘りごたつ式で床暖房を入れ、暖炉を据えた造り。男女別の大浴場は7時から21時まで使えます。同じ敷地に別棟のフォックスワン(10室)やオートキャンプ場、バンガローを抱える複合の施設で、ワカサギ釣りとバスフィッシングの受付を兼ねています。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、この宿は評価件数が十分に集まっておらず、Media Picks Scoreは算出範囲の下限に置いています。評価の低さではなく、判断材料の薄さを示す数字です。施設の性格は釣りと合宿、キャンプの拠点であり、週末やワカサギの季節は人の出入りが多くなります。湖岸の静けさを求めるなら、時期と曜日を選ぶ必要があると考えられます。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 桧原湖でのワカサギ釣りやバスフィッシング、湖面に最も近い位置で泊まりたい旅、グループでの滞在(20畳の和室あり)
  • 向かない: 籠もる静けさを求める二人旅(キャンプ場・合宿棟を併設)、温泉を目的にする人、献立の作り込みで宿を選ぶ人

具体情報

  • アクセス: JR猪苗代駅から路線バスで裏磐梯へ約40分。五色沼入口バス停から車で道のり約4.3km
  • 客室: 全7室(和室20畳1・和洋室2・洋室4)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00(夕食は18:00〜)
  • 風呂: 男女別の大浴場(ジェットバス)7:00〜21:00
  • 公式料金: 1泊2食 12,100円/素泊まり 7,700円(大人1名・税込)
  • 改装: 2014年12月に改装

よくある質問

Q. 裏磐梯の紅葉はいつ頃ですか?

A. 標高800m前後の湖沼群では例年10月中旬から下旬が色づきの中心です。湖面への映り込みは風のない早朝に限られるため、探勝路や湖岸に近い宿に前泊する旅程が合います。

Q. 車がなくても泊まれますか?

A. JR猪苗代駅から路線バスで五色沼入口へ向かえますが、便数は1時間に1本程度です。バス停から歩けるのはイルレガーロで、オーベルジュ渓翠館は条件付きでバス停までの送迎があります。ほかの3軒は車での移動が前提になります。

Q. 冬も営業していますか?

A. 5軒の公式サイトに冬季休業の明記は見当たらず、ワカサギ釣りやスキーの拠点として冬の案内を出す宿が複数あります。不定休や臨時休業はあり得るため、日程が決まった段階で各宿に確かめてください。積雪期は冬用タイヤが必要です。

Q. 温泉に入れる宿はありますか?

A. 今回の5軒で公式サイトに温泉を掲げるのは、貸切の温泉露天を2カ所持つLakeside Inn Beehiveです。おやど風来坊は公式に温泉ではないと明記しており、周辺の日帰り温泉を案内しています。

Q. 湖が見える宿はどれですか?

A. 湖岸に直接面するのは桧原湖東岸のこたかもりです。ほかの4軒は森や国道沿いに建ち、客室から見えるのは主に磐梯山や落葉樹の林です。

本記事の参考情報

・裏磐梯観光協会 — 宿泊施設の一覧とエリアの観光情報
・裏磐梯ビジターセンター — 五色沼自然探勝路(全長約4km)の案内
・Wikipedia: 1888年の磐梯山噴火 — 湖沼群の成り立ちの背景

編集部から

裏磐梯の小宿に、建築家の署名や数寄屋の語彙を求めるのは筋が違います。ここにあるのは高原の小さな洋風宿の系譜で、吹き抜けの食堂、薪ストーブや囲炉裏といった要素が繰り返し現れます。5軒に通底する選定軸は、その型のなかで何を削り、何に絞ったか。売る室数を絞った宿、厨房を主語にした宿、サウナと酒に振った宿。小さいことを制約ではなく方針として扱っているかどうかを見ました。なお、同じエリアで候補に挙げた一軒は2026年5月末で営業を終えており、この規模の宿が続くこと自体が自明ではないことも記しておきます。噴火から140年近くを経た森と湖を、次はどの季節に歩きますか。

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